第231回 上方落語勉強会

2014年12月2日(火) 京都府立文化芸術会館

桂 あおば 「代脈」
桂 米二   「近目の煮売屋」
桂 吉坊   「ツメ人情(小佐田定雄 新作 Vol.87 お題の名づけ親はあなたです その95)」
~中入~
林家 染雀 「宗論」
桂 紅雀   「かぜうどん」


京都のお客さん、あったかかったです。ほかほか。
かぜうどん、今季初めて聴くことが出来ました。



いっぱいのお客さん。
思ったより広い和室でした。


あおばさん、マクラからお客さんによく受けてました。ネタは、無学亭の時とは違いますが、ずっと好印象な内容。主人公のあほさがよく板についてました。年配の先生の声も安定感があったように思います。代脈は、南天さんに教わったネタなんでしょうか?(そんな呟きを見た気がするのですが、勘違いでしたらすみません)。細やかなテキストと、ざっくりしたあおばさんの持ち味が不思議とぴったり合っている気がしました。伸び盛りといった一席。途中、つまって少し噺を巻き戻す場面がありましたが、私の中で帳消しました。


お次は、米二さん。マクラは食べ物のうらみは怖いという、10年前、文我さんとカニのやり取りをしたこと。お皿の模様まで…ってところで、可笑しかったです。マクラで「近目の煮売屋」は、笑いが少なくて、面白くない噺だと仰っていましたが、個人的にはとても面白かったです。清八が正論なんですが、ちょっと意地悪なことを言う。そこに嫌味を感じないんですね。笑いもけっこう多かったように思います。ストーリーそのものは単純明快で、私の好きなタイプです。最後まで飽きずに聴かせてもらいましたが、一番印象深かったのは、噺の序盤で、喜六が清八の元を訪れ、「うわ~ごちそう、仰山(ぎょうさん)並べて」(※台詞はうろ覚えです)と言うところ。まだご馳走の内容を、清八が言う前でしたが、本当に沢山のご馳走が並んでいるように見えました。米二さんの視線の使い方が凄くて、約一秒ずつご馳走の品を見つめて、視線を次のご馳走の品に移して行くんです。一秒、一秒、一秒、一秒とご馳走を見つめる(表情も微妙に変えながら)。喜六は四~五品ほど見ていました。全体的に見ても、ここをこうして欲しい、という要望が出ない内容でした。


お次は、吉坊さん。マクラは本番が近いのに、歯医者さんに親知らずを抜かれそうになったというお話を。「つめ人情噺」は小佐田先生の新作で、たこ助という文楽の人形遣いが主人公。これが舞台で大ドジばかりしてしまうのですが、人形を大事にしているということで、恩返しに動き出します。前半から中盤までは、笑いどころが沢山あって、本当に面白かったです。後半は一転して、シリアスな展開に。火事の場面は強烈でしたね。吉坊さんは人形の役をする時、とてもリアルで驚きました。さっきまで動いていた人形が、ぴたっと動かなくなる場面があって、人形独特の冷たい表情が、何だかとても綺麗に思えました。「文楽は人形だけでは無く、一代一代人形遣いが伝えてきたもの」というような台詞があって、大阪市の補助金カットの話が頭をよぎりました。メッセージ性を一方的に強く捉えてしまって、火事の場面からは、噺の中に入って行けず。私の苦手な噺は、何度か聴いている内に好きになるものなので、余り深刻に考えていません。


中入り中に、吉坊さんの演じた噺のお題を、お客さんが考えます。あおばさんが、お題の書かれた紙を回収するのですが、お客さんが多くて、一度に回収できません。箱、持って来たら良かったのかも。私は「たこ助人形遣い」というタイトルを書きました。ひねりが全くありませんでしたね。たこ助という名前が凄く気に入ってしまったのです。


中入り後は、染雀さん。初めて聴く噺家さんです。吉坊さんのことを「あれがネタおろしとは」と褒めていました。マクラは、飛行機の中で有名人が乗っていた、というもの。それから、物事には陰陽があってと、あれこれお話してくれて、最後あたりにお岩の幽霊を出してくれまして、拍手が鳴りました。「宗論」は、今まで米紫さんなど、紅雀さんと年季が近い噺家さんのものを聴いたことがありまして、染雀さんは少し年上です。そのせいかテキストも少し古く感じました。「この言い回しは!」と大発見した心地です。(一門の違いで生まれたテキストの違いかもしれません)。キリスト教にはまっている息子に小言を言う親父さんが、「お前にはいずれ身代を、お釜の灰まで譲らなあかん時が来る」というような台詞がありまして、お釜の灰って! と思いました。きっと江戸時代の人も使っていたでしょう(多分)。あと息子は「~デース」という語尾は使わず、「~であります」と言ってました。米朝一門の噺家さんに出番を挟まれていたせいか、ちょっぴり緊張されていたのかなと思う場面も。大きな声で押し切っちゃう所は、紅雀さんと似ているなあと思って聴いていました。サゲは、権助が親子喧嘩を止めに入って(えらい!番頭は何処へ行った)、親父「お前は何宗や?」「わしは紀州(の生まれ)です」でした。


染雀さんが高座を降りた後、吉坊さんが登場。まずは、面白かったお題や、気になったお題など、集まったお題の雑感を述べられました。「たこ助」「文楽」「お七」が付くお題が多かったようです。和気あいあいとして良い雰囲気でした。最終的に、二人のお客さんのお題を足して二で割るお題に決まり、お客さん二人は景品をもらってました。ツメ人形のストラップか手拭いを選ぶという形でした。こういう落語会、楽しいですね。


お次は、紅雀さん。お決まりのマクラの冒頭「えーーーー……」から、くすくすと笑い声が。京都のお客さん、落語の聴き手として最高だと思います。うどんセットの話をされました。何年も前、出町柳のお寺の落語会でもこのマクラが出たのですが、大阪では余り聞きません。ひょっとして、京都のうどん屋さんなのかなあと思いました。
・「うどーーーーんそーいや、うーーーー」という売り声は、「うどん、蕎麦や、う(どん)」がなまったものだそうです。最後の「うー」は、遠くの家までうどん屋が売りに来ているよと、伝えたいため・・・だと、どこかの噺家さんのマクラで聴いた気がします。江戸時代、大阪でも蕎麦が一時流通していた時期があったそうですが、江戸方面の地震か火事かで、蕎麦粉が大阪に入って来なくなり、それでうどんが主流になったとか。京都に蕎麦の老舗があるそうです。
・星を指さす場面は感無量。もう一度拝めるとは。星を指さない時もある様な気がするのですが。
・酔っぱらいのおじさんの歌は「数字の歌」。実は姉妹の歌の方が好きなのですが、歌詞が短いから使い勝手が良くないのかもしれません。
・犬の存在がほんのり暖かい。「無視して行きよった」と言ってたかな。「無視か」の三文字と再会できる日を待ちます。(泥の瞬間移動も)
・酔っぱらいの人の妄想の中の一流の料亭の女将さん、にこにこっとして愛想のいい感じ。もう少しクールな笑みでも良いのになと思ったり。お澄まし美人を見れるのは、珍しいのかも。三枚起請とか。
・博打の場面から噺が一層冴えて来た感じ。空気ががらっと変わる。花札を切る真似をする手がいいなあと思いました。雀三郎さんの所作で発見したのですが、やっぱり本命が一番です。
・「閉めたらさみしいやろ」は、最後のお客さんの台詞。「ながせめしまに」という落語感想ブログで、以前よく褒めらていました。笑いは起こらないけれども、無くなったらさみしい台詞です。
・うどんをすする音は、やっと慣れてきたかも。にこさんが「リアルと言えばリアルやで」と言ってくれたので(※この後まん我さんのうどんのすする音を褒めていたのですがそこは記憶が曖昧です)、目から三枚くらい鱗が落ちました。今までの経過をたどると、うどんっぽい→きしめんっぽい→ペンネっぽい→すいとんっぽい→この世のものでは無い何か(ゴースト)を吸い込む音→やっぱりうどんっぽいかも←今ココ。京都ではうどんのすする音でくすくすと笑い声が起こった。某市のお客さんはぽかーんとしてた。紅雀さんは真のギャンブラーです。

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近眼の煮売屋

桂米朝コレクションという文庫本を仕事帰りの電車の中で
読んだりします。
近眼の煮売屋も何回も読んでますが
テキストだけでもすごく面白く感じます。
愛宕山と同じサゲなんですが
近眼の煮売屋のほうが馬鹿馬鹿しくて好きです。

しかしあの寒い日に京都までお出かけとは、
ファンの行動力には恐れ入る次第であります。

ツメ人情

こんばんは。
寒い中、京都までようお越し。

吉坊のツイッターより転載します。

昨日は、小佐田センセの新作を初演させていただきました。ありがとうございました。お客様に題を付けて頂き、「ツメ人情」と相成りました。これから永くやりたいと思います。お見守りくださいませ。

っちゅうことで、ツメ人情が正解でした。
ツメ人形の音とかけて、ツメ人情なのかな!
私も字がわからなくって、ググってみたのですがら、ツメ人形ってカタカナしか出てきませんでした。
よっぽど難しい字なのか、元々カタカナなのか?

こんばんは

川北さんへ

本を読んだだけでも面白いなんて、ますます演じ手が増えてほしいネタになりました。難しい噺だとは思うのですが、米二さんの元に若手の噺家さんがどんどん習いに行って欲しいです。言われてみれば、愛宕山とサゲが同じですね。私も煮売屋の方がまだちょっと現実味があって、いいなあと思います。

寒い日ほど良い落語が聴けそうな気がするのは、きっと箕面の落語会に行っているせいですね。


ぴーまさんへ

吉坊さんのツイッター、更新されたんですね。本当のタイトルが分かって良かったです。(^^)
ツメ人形って、元は爪人形と書くものだと思ってました。詰め人形なんでしょうか。やっぱり言葉はかけていると思いますよ。落語レポ、吉坊さんがネタ名を選ぶところがごっそり抜けてますね。追記しときます。

うどん

こんばんは
うどん屋さんの売り声の件、ずっと謎でしたが(噺家さんによって微妙に違う気もするし)、「うどーん」とハッキリ言うてるのに、また「うー」がうどんやとか、「そー」がそばなら、「いや」は何?とか、ますます謎が深まってしまいました(^_^;)
紅雀さんのうどんの召し上がり方はとってもリアルでしたが、まん我さんのは豪快(男性的)なんです。
でもこれはべつに褒めてるつもりではなくて、事実ありのままをご報告したつもりでした。
この世のものではない何かを吸い込む音、とはなんともはや、でございます(^^)

うどん屋さん

にこさんへ

おはようございます。
そちらのブログにコメントを書こうと思ったのですが、こちらで言葉をまとめる練習をしてからと思っていたところ、先に見つかってしまいました。
「そいや」は「蕎麦屋」という言葉がなまったものだそうです。分かり辛くてすみません。後で本文を直しますね。
ヤフー知恵袋で発見しました。
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1180348541

事実ありのままを言ってくれるにこさんに感謝感謝です。

うどんの建前

私は、いつも「うどんや そばや うどん」と聞こえていました。
皆さまのように敏感でないので、そう聞こえるのか?
先日鉄瓶さんが時うどんをかけていたので、かなり注意してきいたのですが。「うどんや そばや うどん」と聞こえました。
私は、うどんやそばは、どうですかという意味と理解していたのですが、正解かどうか疑問です?
そばや=そば屋だという、湖涼さんの説には、頭が下がる思いが致しました。

うどん、そばや(接続詞)

もずさんへ

言われてみれば、「屋」よりも接続詞の「や」の方がしっくりきますね。再度本文を訂正しました。ご指摘ありがとうございます。

噺家さんによっては、聞き取りやすいように、はっきりと売り声を言う人も居るようです。
紅雀さんは、最後「うー」で終わっていると思いますよ。

あさ吉さん

今日は。あさ吉さんのかぜうどんを聞いてきました。
何回も言われるので、チェックしやすかったです。
「うどんや そぉ~いやぁう~」と聞こえました。
鉄瓶さんの時と明らかに違いました。

これって、紅雀流?
一門によって違うのか?ますます、わからなくなりました。
( ゚∀゚)ギャハハ八八ノヽノヽノヽノ \ / \/ \
一応 報告。

うどんの売り声

あさ吉さんはの売り声は「うどん」の後に「や」を付けていて、枝雀さんの「かぜうどん」と同じですね。
うどぉ~んや、そぉ~やう~(上方落語メモより)
紅雀さんも、ひょっとしたら「うどん」の後に「や」を付けているのかもしれませんが、私の頼りない記憶の中では、「うどんー、そーいや、うー」です。今度注意して聴いてみます。
 「そば」とはっきり言うのか否かは、一門の違いではなく、何を売っているのか客に分かって欲しいと思っての売り声か、それとも落語の中の時代の雰囲気を優先する売り声かの、噺家さんの演出方針の違いによるものではないでしょうか。
プロフィール

湖涼

Author:湖涼
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