桂枝雀生誕70年記念落語会

2009年11月6日
「桂枝雀生誕70年記念落語会」

桂 紅雀 「牛ほめ(普請ほめ)」
桂 九雀 「御公家女房」
桂 雀三郎「ちしゃ医者」
桂 南光 「あくびの稽古」
桂 枝雀 「つる」(※スクリーン映像)

仕事を一時間早引きして行った落語会。
枝雀さんの面白さは身を持って伝説級だなと思ったのですが、
初めて紅雀さんの落語に納得できず、
がっかりして帰った記憶があります。(;_;)

下の日記では、九雀さんの「公家女房」を、
「延陽伯」と勘違いしているくだりがありますが、
そのまま載せておきます。
11月7日(日) 6日の枝雀生誕70年記念落語会の感想

同上の落語会の感想は、
掲示板の日記の方へも書きましたが、
落語の内容などをメモしておきたいと思いまして。
(いわゆるネタばれ)

これから行くので楽しみにしておきたいという方は、
避けた方が懸命かと。



・紅雀「牛ほめ」(普請ほめ)
この「牛ほめ」、ほとんど、家(普請)をほめる内容なんです。
小遣い稼ぎに新築ほめに行こうか~ってな話。
おじさんに入れ知恵もろてアホが池田まで行く話です。

最後の最後で牛をほめるから「牛ほめ」。
時間の都合で、家をほめるところで終わると「普請ほめ」、
というらしいんですね。
「普請ほめ」にするのなら、短い分、
どこで大きな笑いを持ってくるのか、考えなければならないと思うのですが、
中途半端でしたねえ。残念。
師匠が化けて出てくるで!(←おいおい)

この「牛ほめ」(普請ほめ)、
主人公がアホの極みで、柱のでっぱりを、
いざという時、首吊りに使ったらええんや!
と言う場面があったのですが、
そこはやはり、カットされていました。
枝雀の誕生日会に「首吊り」は禁句やろ…。
 マクラも殆ど語らずに、「牛ほめ」を始めたのに、
「普請ほめ」で終わらせてしまった紅雀さん。
「牛ほめ」のラストはウンコが出てくるから、客に気を遣ったのかなあ。
でも、落語って下ネタが多いから、気を遣ったら切りないと思うけど…。


・九雀「延陽伯」
聞きなれないタイトル。えんようはく、と読みます。
東京では「たらちね」という演目で知られているのだとか。
この、えんようはく、新妻のお名前らしいんですね。
そこがちょっと分からなかったです。
カットされたんかなあ。

公家のお嬢さんを貧乏人がお嫁にもらう話で、
中々、言葉が通じない!という笑いを。

よく考えたら、公家のお嬢さんを貧乏人がもらう、
というのもおかしな話で、
落語のテキスト見たら、「公家へ奉公に出ていたお嬢さん」、
とある。聞き間違いかな?

ともあれ、お嬢さんが平安朝のみやびな言葉を使うので、
全く言葉が通じない。
それでも、カタコトに通じ合ってきて…、
新婚さんのおかしなやり取りが面白かったです。

終盤に出てきた八百屋さん、
みやびな言葉を使う奥さんを面白がって、
自分もみやびな言葉を流行語のように使い始める。
おかしいなあと主人公が思ったら、
八百屋さんのはっぴの裏には「宮内庁御用達」という文字が。
これがオチ。
ネットで検索しても、このオチが出てこなかったので、
取りあえず書き残しておきます。

八百屋さん、出番が少ない割りにキャラが濃くて
良い味出してました。
もう少し長く出して欲しいと思うほど。
この話、ちょっと短く感じました。


・雀三郎「ちしゃ医者」
ちしゃと云うのは、レタスみたいなもの、
らしいです。
やぶ医者が、かごに乗って死に掛けの患者の所へ行く話。
助手?の久助が良い味出してます。
「ほんまに助けたかったら、他所へ行ってくれ」
と。
それで医者の先生の事を、「この人殺し」と言う。
ずいぶん腕の悪いお医者のよう。
 医者は、底の抜けた壊れた駕籠に、
木材を何本か渡して、それで乗って行く事になる。
木材の上に乗った医者の姿を見て、
久助「先生、雀みたいやな。雀医者や。雀が“藪”の中からバサバサ~と」
この件(くだり)、
雀三郎さんが、すかさず飛ぶ真似をしたので、
凄く面白かったです。

駕籠の前は、カカアが死にかけで、と訴えてきた村人が持ち、
後ろは久助が持つ。

所が、道中、お前のカカアは死んだぞ、と言う三人組が現れ、
「医者なんか、ほっとけ」と、
お医者の先生と久助は、暗闇に置き去りにされてしまいます。
仕方がないから、
医者も駕籠を担ぐことに。

夜が明けてきたころ、
タゴ(肥料として使う尿桶)を肩に担いだ村人に出会い、
先生がそんな事したらあかんと、その人、駕籠を担ぎ出す。
タゴは、持って行けないので、
駕籠の中へ!
医者先生、ぽちゃんぽちゃん鳴る物体と隣りあわせで、半泣きに。
(ここ、もうちょっと引き伸ばして欲しかったなあ)
(美味しいシチュエーションだったのに)

最後、耳の悪いおばあさんが出てきて、
「医者」と「ちしゃ」を
聞き間違えてしまう。駕籠の中には「ちしゃ」があると、
思い込む。
(このおばあさんも美味しい役なのになあ)
 駕籠の暗がりに手を突っ込むおばあさん。
駕籠の中には肥溜めとお医者。
探る手は肥溜めの中に入ったり、お医者の顔を触ったり!
何すんねんと、足で蹴ると、
おばあさんの胸にクリーンヒット。
後から来て怒ったのが、おばあさんの息子(たぶん)。
なにさらすねんと、怒鳴ると、
久助「足で良かった。先生が手を出したら助かってなかった」
と言うオチ。

この話も短く感じました。
もっとじっくり聞きたかったです(ー_ー;)


・南光「あくびの稽古」
かすれ声の南光さん。
それでも、落語には全く差し支えなく。
(雀太さんと一緒ですね)。

話のストーリー自体が簡単なので、
(主人公が、友人に誘われて
「あくび指南いたします」
という稽古小屋へ出かける話)
細部に力を入れて、
話にふくらみを持たしてくれます。

友人の稽古趣味に辟易している主人公。
その過去の出来事など等。
今度は「あくび」の稽古をするので、
一緒についてきて欲しい、と言われる。
「お前はアホか」と主人公は言うものの、
通りには、立派な看板がかかっており、
確かに「あくび」とはいえ、ちょっと興味をそそられる。

行けば先生と思しきご老人が小屋に居て、
お若いのにけっこうな事で…
と珍しそうにものを言う。

一番初めの稽古は、
「もらい湯のあくび」
何でも、ご近所のお風呂を借りたときに、
ぬるくなってるお湯の中で、
「けっこうけっこう」
と月を眺めながらする「あくび」だそうで…。
(凡人には理解できない世界です)

主人公の友人、
それは渋すぎると言い、
自分は将棋が好きなので、将棋をする時の
あくびを習いたいと言い出す。
 それは初心者のする「あくび」ではない、と言う先生。
でも内緒にしてくれるなら教えてくれるらしい。
(ばれたら組合?に怒られるのだとか)

将棋は大詰め、
自分の勝ちは決まったようなもの(という設定)。
でも相手は中々まいったと言わない。
そこで、
「長い思案じゃなぁ……、下手な考え休むに似たり、
こらもぉどぉ考えても 詰んだぁる……。まだかぁ、将棋もえぇが、
こぉ長いこと待たされたら……、 退屈で、退屈で……
「はぁ~~~っ、あ~~~」たまらんわい……」(※)

手本を見て、将棋のあくびに挑戦する友人。
ところがまだ30代なので、せっかちなあくびをしてしまう。
指摘されても直らない、
先生と友人がごちゃごちゃ言ってる所へ、
主人公、大きなあくびを一つ。
先生、それを見て、
感心する、という話。

(※) 【上方落語メモ第1集】その三十六 あくびの稽古より抜粋
HPトップは「世紀末亭」です。


・枝雀「つる」(ビデオ落語)
暇を持て余す男と、ご隠居っぽい甚平さんが出てきます。
落語の登場人物は基本的に暇人です(笑)。

よくあるパターン、
「こっち入り」「上がらせてもらうわ」
から入る導入部。
一味違うのは、暇な主人公が、
「陽気に上がりましょうか、陰気に上がりましょうか、派手に上がりましょうか(etc...)」
と訊くところ。
暇人全開です。

甚平さん家(ち)に上がった、主人公、
お茶が出てけえへんなァ~と、ご催促。
「粗茶やけど」と甚平さんが出せば、
「ほんまに粗茶やな」と返してくる。さらに主人公、
粗茶が出たなら祖茶菓子が出るはずやけどなァ~とご催促。
甚平さん、怒りもせずに羊羹を出す。
「またえらい薄く切った羊羹で…」
これじゃ独り立ちできんだの、口の中に入れたら一瞬で消えた、淡雪羊羹だの、
包丁で切ったんちゃうやろ、カンナで削ったんやろと、
言いたい放題。(^^;)

枝雀師匠、早口なんですが、
そこは何度も言ってくれるので大丈夫でした。
大事なところはゆっくり喋ってくれますし。
・・・それにしても甚平さん、心が広いなあ。
落語の良い所は、
アホを受け止めてくれる人がいる所です。

暇な主人公と甚平さんが世間話をする。
主人公はアホなんで、
近所の人が甚平さんの悪口を言っていた事をばらすんですね。
何もせんとブラブラしてるのは、銀行強盗をやったんちゃうか、と。
結局、別の人が甚平さんをかばってくれたのですが、
(も~主人公は何もせんなァ)
「甚平さんはこの町の生き字引や」
と言ったのだと。

生き字引とは、何でも知ってる、
歩く辞書。

主人公、そこで友人の家で見た千羽鶴の屏風を思い出し、
友人が、「鶴というのは、日本の名鳥やで」
と自慢したことを話します。
所が、「なんで日本の名鳥なん?」
と主人公が聞くと、友人、用事を思い出したと逃げてしまったそうな。

甚平さん、膝を打って「教えたる」と。
鶴は雪のように白い身体と、丹頂という赤い頭、尾は黒々として、
姿が誠に美しい。加えて、いったん「つがい」になると、
相手が死ぬまで一生その絆が続くのだとか。
日本人は鶴のそこを気に入って、日本の名鳥とした、と。

主人公、なるほど~と感心する。
甚平さんは「鶴はむかし“首長鳥(くびながどり)”と言ってな…
万葉集とか、日本書紀とか枕草子には“鶴”ではなくて、
首長鳥(くびながどり)と記されてある」、と。

主人公、ますます感心して、
「ほな、なんで首長鳥(くびながとり)を“つる”と言う様になったん?」
甚平さん、今まで知った顔をしていたので、
急に知らんと言い出せず、苦し紛れに、
「昔、ひとりの老人が浜辺へ立って遥かな沖合いを眺めてござった。
唐土(もろこし※中国大陸)の彼方から首長鳥の雄(オン)とおぼしきものが一羽、ツ~~ッと飛んで来て
浜辺の松へポイッと止まった、あとへさして雌(メン)とおぼしきものが、ル~~ッと飛んで来て、
これも浜辺の松 へポイと止まった。
これを見ていた老人が、あぁ首長鳥と思ていたが……“つる”じゃな」(※※)
と、言った。

甚平さんの声は投げやりで、
最後の方は、ほとんど聞き取れない。
主人公、何度も何度も甚平さんに「はっきりものを言え」と言う。
ついに甚平さん、大きな声で言ってしまう。

それを聞いた主人公は、さっそく町の皆にも教えてやろうと意気込む。
出て行こうとする主人公を止める甚平さん。
「ありゃあ、嘘や、嘘。」
「しっとるわい」
と、主人公。
生き字引の甚平さんが、アホな事言ったというのが面白くて堪らない。
さっそく友人の家に赴き・・・

“つる”という言葉の由来を教えてやろう、と言う。
友人は迷惑そうに「いらん、いらん」。
それでも主人公は構わず、甚平さんから教わったアホな“つる”の
話を聞かせてやろうと、
「昔、ひとりの老人が浜辺へ立って遥かな沖合いを眺めてござった。
唐土(※中国大陸)の彼方から首長鳥の雄とおぼしきものが一羽、ツル~~ッと飛んで来て
浜辺の松へポイッと止まった、あとへさして雌とおぼしきものが・・・その、雌がやな、雌が…
・・・さいなら」
「なんじゃそら」と友人。

主人公、慌てて甚平さんの家に戻ってくる。
甚平さん、主人公にせがまれて、
泣く泣く、アホな“つる”の話をまたしてしまう。
「そこや!そこが間違ってたんや」
と主人公。
再び友人宅へ走っていく。

またまた“つる”という言葉の由来を教えてやろうと、
主人公。
友人は「また来よったでぇ」と迷惑しきり。
主「昔ひとりの老人が浜辺へ立って遥かな沖合いを眺めてござったんやで、
ほたら唐土の彼方から、まず最初首長鳥のオンが一羽「ツ~~ッ」と飛んできて、(人差し指で空をなぞる仕種)
浜辺の松へ「ル」と止まったんや。 (地面をつかむような仕種)
あとへさして雌が……?その、あとへさして、メンが…」
友人「雌がどうしたんじゃ?」
主人公「ん~~ん、ん~~ん……(空を指した指が空回り)、…黙って飛んで来たんや」


話が進むにつれて熱くなっていく主人公を見て、
お客さんもついつい、のせられていると思うんですよ。
ヒートアップする落語が、
観客全体を巻き込んで進んでいきます。
話術を鍛えたからと云って、ここまで出来るものなんでしょうか。
そこが枝雀師匠の底知れぬ所だと思います。

(※※)【上方落語メモ第2集】その58 つるより抜粋
HPトップは「世紀末亭」です。

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