ざこばさんの崇徳院

ざこばさんの崇徳院、
ちゃんとした記事を作っていなかったので、
7月9日の動楽亭昼席の感想を抜粋して保存します。

お若い頃の崇徳院の音源を改めて聴きました。
意外と枝雀さんテイスト薄かったです^^;
「ぐるぐるぐる~」という所と、
サゲ無し、というところだけが共通点でした。
 音源収録時期は、マクラの内容から、
襲名して間もない頃だと思われます。

抜粋の後は、お若い頃と現在の崇徳院比較をしようと思いましたが、
テキスト内容は殆ど変わっていなかったので、
(但し、ぐるぐる~が短くなり、サゲ有りになった)
ざこばさんの崇徳院の特徴メモになります。




2013年7月9日 動楽亭昼席の感想を抜粋します)

お次は、ざこばさん。
マクラは、最近、眼科の女医さんに恋をしている、というもの。
口調がややきつめで、クールにざこばさんをかわすところが、良いのだそうです。
ざこばさんも、マクラとネタが繋がっていないことが多いように思うので、
まさか、崇徳院が来るとは思っても居ませんでした。
 実は、落語日記さんから、ざこばさんが恐らくお若い時分の「崇徳院」の音源を
頂いておりまして、今回、何と聴き比べることが出来ました。
ご本人の音源と聴き比べるなんて凄い!(興奮)
 過去のざこばさんの崇徳院は、米朝師匠と、枝雀さんの崇徳院の間のような印象で、
ご自身に合うように上手く織り合わせて練られたテキストのように感じました。
 この日聴いた「崇徳院」は、枝雀さんのテキストが薄れ、
ぐっと米朝師匠のテキストに近づいた感じ。
それもまた、ざこばさんの味がよく出ていて良かったです。
熊五郎の性格が、やっぱり違うように思いましたし、
(ちょっと、あかんたれなところがあって、可愛かったです)、
噺の印象も、米朝師匠はしゅっとしてるけど、ざこばさんは、ごつごつと丸くて、
もっちゃりした感じ。
 聴いていて、一番、よっしゃ! と思ったのは
旦那さんの「分からんと言うたかて、日本人やろ? 」という台詞。
これは他の噺家さんで聴くたびに、冷たく感じて、
近い将来、このくすぐりが消滅しますようにと、祈るほどでした。
ざこばさんも、この台詞を言いました。
でも、旦那さんが、眉間に手を当てて、一瞬悩んだ仕草を見せたんですね。
熊五郎の「相手のお嬢さんが何処の誰だか、全く見当が付かない」という台詞を受けて、
その仕草を入れ、「分からんと言うたかて~」と言ったんです。
これには、しびれました。旦那さんの苦悩が伝わってきたからです。
旦那さんも無茶なことを言っているのだと承知しているのだと。
お金持ちのワガママで言った台詞ではなかったんです。
 それから、熊五郎のお上さんが、疲れた熊五郎をねぎらって、
「そやけど、あんた、どうやってお嬢さんを探してたんや? 」という台詞。
ここも違和感無かったです。同情を寄せすぎると、「そやけど」っていう言葉が、
急にクールな響きを持ってしまい、噺の継ぎ目が粗く見えてきやすい所。
米朝さんもそうでしたが、ざこばさんも、お上さんのねぎらう言葉が、ごくあっさりしていて、
「そやけど~」っていう話題の転換に違和感を感じにくかったです。
 最近は、お上さんのねぎらう言葉に力が入っている噺家さんが多いように思いますが、
(それを逆手に、熊五郎がヘマしたという告白を誘う手もあります)
ざこばさんくらいのベテランさんになると、熱い演技でお客さんの目を奪うよりも、
あっさりした口調でお客さんに深く聴かせることが出来るのだなあと思いました。
表面はクールだけど、中身は熱い。これがベテランさんの渋さです。
若手は意外と、逆だったりして。
 サゲは、恐らく、お若い頃は「サゲ無し」だったように思います。
(私の勘違いだったらすみません)。
この日は、サゲ有りでした。熊五郎と棟梁風の男が取っ組み合って、
手に何かあたって(うろ覚え)、その何かが、花瓶に当たって割れた、と言っていたような。
 サゲで三文字抜けてしまいましたが、
私は完璧な落語を求めていません。落語ににじみ出る人間性を見たいからです。
むしろミスが出てから、いかにカバーやフォローするのかが、見所だと思っています。
そっちの方が、断然面白い。
ざこばさんが、いつもより丁寧に、お客さんに終演のご挨拶を仰っていただけに、
楽屋から聞こえてきた声は残念でした。まあ、聴こえていないお客さんも居たようだし、
私はそういうめぐり合わせだったのでしょう。



ざこばさんのお若い頃(恐らく襲名直後)の崇徳院の音源を、
改めて聴きましたが、
意外と、枝雀さんテイスト薄かったです。
「ぐるぐるぐる~」という所と、
サゲ無し、という所だけが共通点でした。
(他にも共通点があったらごめんなさい)。

2013年7月9日に聴いた崇徳院だと、
「ぐるぐる~」が短くなって、
サゲ有りになってました。
米朝さんのテキストにより近づいた感じです。

ただし、
米朝さんと明らかに違う点もありますし、
お若い頃から、現在に至るまで、
崇徳院の内容が上記以外殆ど変わっておりません。
(言葉遣いの細部は異なりますが)
ざこばさんの崇徳院の特徴をメモしたいと思います。


・テキストは基本的に米朝さんのもの。
ただし、米朝さんは、しゅっとしているけど、
ざこばさんは、大阪特有の、もっちゃりした感じがある。
だから熊五郎の性格が違う印象を受ける。
早口で大阪弁がきつく、ちょっとあかんたれな感じ。
そこが凄く可愛い。
・熊五郎は枚方に行っていた
・「誰も来たらあかんと言うてたのに…」という若旦那のポーズは、
弱々しいやや前傾した姿勢(多分)。
米二さんは、前傾した姿勢で、両手を床につけていた。
若旦那が布団をかぶっている所を想像させる。
 ざこばさんが多数派で、米二さんは独自に編み出したのだろうか。
・「ほたらお前死ぬか?」
唐突なくすぐりで非常に難度が高い。
米朝さんより違和感が無いように思う。さらっと言い流して、
唐突感を薄めている。元々、「笑われたら恥ずかしゅうて死んでしまう」
という若旦那の自らの発言を受けて出てくるくすぐりだが、
「ほたらお前死ぬか?」と言うまで間が少々空くので、唐突感が出る。
・若旦那がにじり寄らず、
「手ぇにぎらせて」と言う。ざこばさんらしい。
・「立ち聞きしたな」とは言わないが、
「聞いていたな」と言う。米朝さんは、確か「立ち聞き」とは言わない。
これは、松鶴系のくすぐり。
・「欄間の天人さんがフェー(略)あんたがフェー」
これは米朝さん言わない(多分)。枝雀さんも言うかなあ?
・若い頃「どこの誰か分からん言うたかて、人間じゃろ?」
・現在 熊「どこの誰か分かりまへん」 
旦那「(眉間を一瞬押さえて)そやけど、相手は日本人じゃろ?」
“日本人”は米朝さんテキスト以前から。
“人間じゃろ”は、“日本人じゃろ”と言うと、旦那が冷たい人間のように
思われるため、回避するために言った台詞だと思われる。
若い頃は、テキストで回避したが、現在は、旦那が無茶な事を言う前に、
仕草を入れて旦那の苦悩を表現した。見事という他ない。
・「半泣きになって表に飛び出します」
熊五郎が可愛い。こんな地の文、米朝さんは言ってたかな?
・熊五郎が手がかりなしに戻ってきたことを言えず、
もごもご言っていると、旦那「何か噛んでるんか?」
五代目米團治さんは「空気漏れてるんか?」と言っていた気がする。
・若い頃「お風呂水で薄め」
うなぎ捨てろ、と言わない。
・現在「うなぎ、そっち(台所の方)で食べ」
やっぱり、捨てろと言わない。食べ物を大事にする人。しびれる。
・「三百円なんて、あんたが一生働いても稼がれへん」
熊五郎のおかみさんの台詞。
米朝さんは、具体的に、「あんたは一日●銭の稼ぎしかないんやし」と言っていた。
ざこばさんの方が、あっさりしていて、分かりやすい。
・おかみさんが「そやけど、あんたどうやってお嬢さんを探してたんや?」
という台詞。若い頃は直前に「そやけど、(三百円は)惜しいで」と、
ねぎらった言葉の後に、ワンクッション入れている。
現在は、無かった。無くても違和感無かった。これは凄い。
古典テキストを自在に語っている印象。
・おかみさんが、「荷物まとめて豊岡に帰る」と言う。
大概は、「大和のおばはんところに去(い)ぬ」と言う。
豊岡は、ざこばさんの奥さんの故郷なのだろうか。
・若い頃も、現在も、
「イワシ(おかず)屋さん!」と呼び止められるくすぐりが無い。
ざこばさんがリアリティを追求したゆえんだと思う。
「せをはやみ」を「イワシ(おかず)屋」の呼び声と聴き間違えるのは、
おかしいと。
子供がいっぱい付いてきて、チラシくれ、と言い、犬が出てきて、
人より場所へ向かう。
・散髪屋で、「せをはやみ」と叫ぶ前に、
「わたいは、普通の人間やからな」と断りを、周りの人間に言う。
非常に、ざこばさんらしい台詞だと思う。繊細。
・風呂屋に行き過ぎた熊五郎が「ぶよぶよ」になって、と言う。
これは初耳。
・棟梁風の男を捕まえるとき、
腕をクロスしない。紅雀さんはする。南天さんもする。
腕をクロスするのは、枝雀一門なのか。
・「春の心地して」と言う。
米朝さんは、「尋常に勝負勝負」と言う。
「春の心地」は、松鶴型。ざこばさんが「春の心地」を取り入れたため、
米朝一門下でも、「春の心地」という噺家が増えたように思う。
「いざ尋常に勝負勝負」は、米二さんで聴いた。千朝さんもそうだったような。
・若い頃は、サゲ無しだった。
(少なくとも襲名直後は、そうだったようだ)
・今はサゲ有り。鏡のサゲを言う噺家が減ってきた。
もはや、ざこばさんが最後の砦といった感がある。
・若い頃の音源を聴いても何も思わなかったが、
今は、朴訥(ぼくとつ)とした話し方で、聞いていて、これが「落語」なのかと、
しみじみ思った。若手中堅の落語は、身振り手振りが大きく、一人芝居っぽい。
彼らも年を取ると、語り中心になるのだろうか。

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