第10回 いくた寄席

2012年7月15日(日) 神戸・元町

桂 弥太郎 「千早ふる」
すずめ家 ちゅん助 「延陽伯」
桂 吉弥  「蛇含草」
~中入り~
桂 紅雀  「替り目」
桂 吉弥  「はてなの茶碗」


ほぼ満員! 笑いの多い寄席でした。
金屏風に赤い提灯がついていて可愛かったです。
 ネタ出しされてなかったので、演者の出番順も知らず、
もしかして「宿替え」を出されるのかなと思いましたが、
違っていて、何となく、ほっとしました。



この日は、18日のめいぷるの会も
控えていましたし、参加しないつもりでした。
でも、頭の中で、もしも宿替えが出て、
それがめいぷるよりも面白かったらどうしようとか、
色々考えると、居ても立ってもいられなくなり、
気が付くと出かけていました。


いくた寄席の会場は、
神戸花隈亭の直ぐそばで、
行き方も何となく、分かっていました。
この間は、西九条経由で行きましたが、
難波経由の方が安くつくことが分かり、
さらに、元町駅で降りて、
地下鉄一駅分の交通費を浮かそうという、
浅ましい思いにかられました。
どの道、「かもめ食堂」へ寄る予定だったので、
元町駅で降りた方が勝手が良かったのです。
汗の小一升もかいて、夏日の神戸の町を
歩きました。緑が多くっていいですね。
建物もレンガ造りや石造りの立派な洋館が多かったです。
どうも官公庁が集まっているところみたい。
街路樹として植えられたサルスベリの白い花を
発見し、その直後、かもめ食堂の看板を
見つけました。「この角を曲がると、
かもめ食堂があります」という表示です。
大通りの道を曲がって小道に入ると、
シャッターの閉まった食堂が目に入りました。
まさかまさかの定休日。
紅雀さんのお店に行ったら大体閉まってる、という
運の悪さがファンにまで乗り移ったのか、
と、己の不運を嘆きました。
 ここだけの話、実際にお店が開いていても、
食べる時間は到底ない、ギリギリのスケジュール
でした(悔しいから、お店を見るだけの
つもりだったのです。でも、開いていたら、遅刻してでも
食べていたかもしれません)

いくた寄席の会場(生田市民会館)の前に、
大きな坂道があり、そこを下って、
コンビニ・ローソンでおむすびを二個買って、
お店の前で、食べました。
なんて切ないランチタイム…。
これも全て、ぎりぎりの時間に出かける
自分の計画性の無さが災いしたもの。
ちっとも懲りない私に乾杯。
もう汗だくになって食べました。


前日に行く事を決めたので、
当日券で入場しました。
二階のホールは、凄い沢山の人!
ほぼ満席で、
200人以上は入っているように感じます。
起伏の無い椅子席でしたが、
前の人の頭が邪魔にならないように、
椅子の位置を前列と少しずらして、
配置されてありました。
 高座には、金屏風が立てかけてあり、
屏風に、
「い」「く」「た」「寄」「席」
と、一文字ずつ書かれた赤提灯が
つっています。金の屏風に赤い灯りが
凄く映えて綺麗でした。
こういう高座の飾りつけは初めて見ます。


会の始まりを告げる、二番太鼓と笛の音は、
動楽亭では余り聞かないややゆったりめのリズム。
太鼓が、笛の人を急かすような慌しい叩き方は
好みませんが、この日は、もう少し、
太鼓の人に、笛の人を支えるよう、
リードして欲しかったかも。
どちらも譲り合っている印象を受けました。
これも人柄が感じられて良いなあとも
思うのですが…。生のお囃子さんがいる
ということは何より嬉しい事です。
笛の人は、かなり技量があるようで、
出囃子の石段の三味線に合わせて、
笛を吹いていました。



トップバッターは、弥太郎さん。
最近、私と歳が近い事を知りました。
(勘違いでしたらすみません)。
「千早ふる」は、以前、どこかで
彼のものを聴いた事があります。
前半のくすぐりを、もう少しものにして
欲しいと書いたような?
今回は、前回よりもパワーアップしている
印象を受けました。それでも、前半の
笑いをもう少し、と思いました。
旦那さんのゆったりとした構えが少ない
のでしょうか? 二字熟語が、聞き取りづらい
と思う場面も(具体的に思い出せない)。
後半の巻き返しが、はっきり目に見えたのは、
千早太夫の「あ~れ~っ」という
素っ頓狂な声。この場面の周辺も、噺のリズムが
かなり良かったように思います。
この上手い間合いを、前半にも是非。


お次は、すずめ家ちゅん助さん。
年配のお坊さん風の噺家さんが出てきました。
ずばり、スキンヘッドです。
写真では見たことあったのですが、
ほんと、写真の通りでした。
高座に上がるなり、お坊さんっぽく、
お客さんに対して手を合わせます。
 マクラは、同居されている女性(奥さま?)の
天然さ加減について。とても面白そうな方です。
それから、小咄をいくつか。
30くらいの女性が泣いていて、訳を尋ねると、
子どもの純粋な疑問にショックを受けたから…
というものでした。子どものあどけなさと、
母親を泣かす台詞の妙は、若手は勿論中堅さんでも
出来そうもありません。ベテランさんじゃないと
上手く笑いに繋がらないように感じます。
 ネタは「延陽伯」。
テキストは、かなり王道なものを感じました。
お風呂に入りに行く場面や、
お嫁さんと一緒にご飯を食べる妄想場面は、
なかったように思います。
この二つが入ると、時間も延びて、
やや大ネタっぽくなりますね。
けれども噺の筋から脱線する場面でもあります。
 王道だなあと思ったのは、
目新しいくすぐりが、殆ど見当たらなかった
ことです。なのに、お客さんの心を
しっかりと捉えていました。
奇抜なアイデアではなく、「話し方」そのもので、
笑いを取っている確率が凄く高いのです。
この話し振り(テキストの扱い方)は、
渋くて格好よいなあと思いました。
 聞き慣れない言葉を発見したので、
メモしておきます。
お嬢さんを褒める長い台詞の
最後に、“十人前”の器量?(うろ覚え)を
持っていると言っていました。
 それから、お嬢さんが、
自分のルーツを扇に書くとき、
主人公が「漢字は書かんといて」
枝雀さんのCDでは、
「昔から(小さい時分から?)
心安うしてへんさかい」
だったように思うのですが、
ちゅん助さんは、
「小さい時分に縁を切って…」
と、言ってお客さんを笑わせていました。
 これは仕草つきで(多分)、
個人的にかなりツボでした。
 八百屋さんが来る前の場面、
夜中にお嫁さんが枕元に手を付いて、
「いったん偕老同穴を…」の台詞は、
きちんとありました。紅雀さんはカットした
場面です(しつこく覚えている私…)。
 サゲは、お嫁さんが「恐惶謹言」と
言い終わり、主人公が「よってくだんのごとし」と
文末の言葉をかけあうもの。
紅雀さんだと違和感を覚えたこのサゲは、
ちゅん助さんだと、すんなり受け入れられました。
やっぱり演者の年齢なのでしょうか。
それとも、もう一度聞いたら、
受け入れられるのでしょうか。
若い世代には、新しいサゲをして欲しい、
と思うのですが、代替案も浮かばない上に、
個人的には「よってくだんのごとし」を超えるサゲを
聴いた事がありません。
 ちょっと脱線しましたが、ちゅん助さんの
噺はとても良かったです。プロかアマかよく
知らないのですが、プロ扱いで、一箇所、
言い直しがあった所だけ、残念でした。


お次は、吉弥さん。
マクラは、この会館のエレベーターで、
“吉弥”だと気付いてもらえたことを。
以前、来た時は、気付かれなかったそうです。
他にもマクラの話題があったような気がするのですが、
思い出せません。^^; 夏にまつわる話を
されたのかな。阪神の話をされてたような。
そうそう、お子さんと見に行って、一喜一憂する吉弥さんに、
お子さんが突っ込む…というような内容だったと思います。
吉弥さん、久しぶりに声を聞いて、
声が若返った印象を受けました。私の頭の中では、
もう少し喉元から声を出しているイメージだったのです。
この日は、お腹から軟らかい声が出ているように
感じました。
 ネタは、夏らしく「蛇含草」。
この噺、枝雀さんのCDを聴いて、ぞっとした
思い出があり、未だに苦手意識があります。
そもそも大食い競争が苦手なんですね。
でも、枝鶴さんのこの噺を聞いて(素麺でした)、
男の喧嘩→そして友情、の話だと思い、とても素敵な
ネタだなあと思いました。
 さて、吉弥さんの「蛇含草」は、お餅でした。
米朝一門は、お餅なのかな。夏の風景が広がる、
話っぷり。お餅を食べ続ける場面は、思ったほど、
えぐいものを感じませんでした。
吉弥さんの落語は、余りグロテスクなものを
出さないのでしょうか。さらっとしていますが、
しっかりとした印象も残ります。
お餅を二つに割る仕草(?)が面白かったです。
両手を斜めに大き~く広げていました。
 話は少し戻りますが、主人公が、
蛇含草の存在に気付き、部屋を綺麗にしているのに
こんな茶けた汚い(?うろ覚え)草を飾るなんて、
勿体無い、と言う台詞に、おやっと思いました。
初めて聞いたような気がします。
蛇含草の存在が際立って、良い表現ですね。
この台詞は、枝鶴さんでは無かったような
気がします。 
 お腹がいっぱいになって、蛇含草を発見し、
それを食べる仕草は、枝鶴さんの方に部がある
ように感じました。はちきれんばかりのお腹を
さする手、草の存在に気付き、本当に食べづらそうに
噛みます(草ですからね…)。
声色もかなり変えていました。
これをグロテスクに感じさせないよう演じるには、
かなり難しいように思います。
 品を崩さず演じ切れるというのは、
吉弥さんの強みかなあとも思うのですが…。
それにしても、この噺を切り(トリ)ネタとして
持ってくるなんて、驚きました。中ネタの
イメージがあったので。吉弥さんの手にかかると、
切りネタになるから不思議です。


中入り後は、紅雀さん。
何番太鼓というのか分かりませんが、
中入りの終わりを告げる太鼓の後に、
紅雀さんの出囃子が鳴った時、
いつもにも増して、ときめきました(><)。
神戸の街で、出囃子が鳴っている! と思い、
感動したのでしょうか。それとも、中入りの
終わり(寄席の再開)を告げる音楽が劇的に聞こえて、
じーんとしたのか、自分でもよく分かりません。
 マクラは、この間、いくた寄席に出演した時は、
車で来たけれども、今日は、地下鉄で来た、と。
エスカレータに乗りそこねて、えらい目に遭いました。
地下鉄の階段が深すぎて…。
 確かに、地下鉄って、深い場所にあったり、
浅い場所にあったりしますね。^^;
 それから、酔っ払いの小咄をいくつか。
日と月の見分けがつかない話と、居酒屋の中年と若者が
意気投合する話。小咄の前に女性を演じるコツを、
喋っていたように思います。
 会場の入り口でもらった番組表に、中入り後の
モタレ(トリの前)と書いてあったので、それを見た
瞬間、「宿替え」は、しないだろうと思いました。
 この日の「替り目」は、今まで聞いた中で、
一番納得できる内容(今までは何だったのか)。
そもそも、紅雀さんに初めてお手紙を出したのは、
替り目のフルバージョンが聞きたいという、
要望表明のためで、そのわだかまりがあってか、
彼の中では、大ネタではなく、中ネタ扱いの噺
になると分かったあとも、
まるっと納得できる替り目に出会えてませんでした。
 千林商店街のバーで聞いた「替り目」は、
ピースが、やや離れている印象を受けましたが、
今回は見事に、ピースがくっついた感じです。
“回覧板”がテキストに入ってきたのは、
南天さんの影響を思わせます。千林の会も、
その言葉が入ってました。確か、この会は、
べにてんの南天さんの「替り目」のすぐ後で、
あんな凄い替り目を聞いた後に、よく出せるなと
思ったものです。個人的には、南天さんの替り目の
影響で、本来のペースを失い(あくまで想像)、
押しつぶされた印象さえ受けました。
本来のペースを取り戻してくれて、
本当に良かったです。これが紅雀さんの「替り目」
なんだと、思いました。
すごく楽しかったし、神戸のお客さんも、
とてもよく笑う人たちで、寄席の雰囲気とぴったり
合った、替り目を出されたように思います。
メモ:おかみさんが神戸新聞を読むくすぐり。
千林では、朝日新聞だった?
 夫婦が、陣地の取り合いをしている、という
くすぐりは無くなったが、特に違和感を感じなかった。
(もずさんは残念がるかもしれない)
 お上さんに、ありがとうと言えない。
「おうおう」としか言えない。笑


トリは、吉弥さんの「はてなの茶碗」。
ここのマクラで話されたのか、蛇含草の時に
話されたのか、ちょっと自信がないのですが、
亡くなった吉朝師匠が夢に出る話をされました。
ちゃんと言葉を交わすことができた夢で、
吉弥さんにアドバイスまで! 
お前の喜六は少しやりすぎとちゃうか?
(だったかな?)
去り際、吉弥さんに、お茶目なイタズラを
しかけるところは、佐ん吉さんのマクラに登場する
師匠と大変似ています(同一人物ですが…)。
かなりリアルな夢を見たんじゃないのかなあと
思いました。奥様のオチ?付きで、
とても面白かったです。
 「はてなの茶碗」は、南天さんのものが
印象に残っています。聞き比べると、主人公の
性格が割りと違っていて面白いなあと思いました。
南天さんの主人公は、ちょっといらちな職人さん。
吉弥さんのは、おっちょこちょいで、喜六を少し
まともにした男の人のように感じました。
家を勘当されたのも、博打に手を染めたというよりは、
悪い友達が起こした騒動に巻き込まれたのではないか、
という想像までしてしまいました。
茶金さんの店の丁稚さんにつかまり、茶金さんと
再会したときも、「キャー茶金さん!」と、
ちょっとミーハー?な様子の主人公が可愛かったです。
 南天さんの方が、ディティールが詳細ですが、
吉弥さんの落語に、リアルすぎる表現は
合わないと思います。でも、お金を受け取るかどうか、
迷う場面は、もう少し引っ張って欲しかったかなあと。
これは私の好みですが…。
 お天子さんのモノマネは、たまさん以外で、
初めて聞きました(笑)。モノマネというか、
言い方を、ちょっとそれらしくしたくらいですが、
現代のものを、少し取り入れてくすぐりにする
その頻度は、南天さんよりも高そうです。
 主人公の様子は、とても自然に感じましたし、
茶金さんの風格も、しっかりと出ていたように
思います。お客さんも満足したんじゃないのかな。
静かに噺に聞き入っている客席の空気は、
本当に良いものです。


神戸(いくた寄席)のお客さんって、
凄くいいんだなあと思った一日でした。
 帰りに会館の自販機で、
お水を買うと、売り切れになりました。
自販機の売り上げが凄い事になってそうだなあと
思いました。


帰りの電車の中で、
柳沢慎吾さんの万葉倶楽部(温泉)の
ポスターを発見!
花隈亭へ出かけたときも素敵だなあと
思ったのですが、また見れて嬉しかったです。^^
狂歌風の歌が癒し系で、お笑い系なんです。
何種類かあってどれも好き。
仕事でまた失敗しちゃった、いい湯に漬かって
流して忘れよう…というような内容も。
上の句が全て「ウウウウウ」の歌も、
人を食っていて楽しいです。
この日は、エアで牛乳を飲んでいるポスターが
落語のお酒を呑んでいる場面に見えて、
ほっこりしました。
落語やってくれないかなあ。


※7月25日に感想を書き終えました。

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非公開コメント

米ニさんの会の時、神戸は遠かったと言っておられたので、この会の参加はないと見ていましたが、裏をかかれましたね。
すずめ家 ちゅん助氏は、紅雀さんを始めた見た舞台でも競演しておられました。河内長野ラブリーホールの雀々独演会でした。紅雀さんは牛褒めだったと記憶しています。4年ぐらい前かな??

もずさんへ

 前日まで迷っていたので、当日券を購入することになりました(とほほ)。この間は、三宮から地下鉄に乗り換えて「県庁前」で降りましたが、三宮で地下鉄に乗り換えずに、「元町」まで行って神戸の町をフラフラとさ迷い歩きました(笑)。緑が多くて、レンガ造りの立派な建物がそこかしこにあって、良かったです。前回は、遅刻寸前だったので全く神戸の町を見る余裕がありませんでした^^;。
 すずめ家ちゅん助さんは、初めて見ましたが、とてもお上手で、吃驚しました。素人の方だと思っていましたが、玄人の方なんでしょうか? 河内長野や堺の寄席にしか出ない人だと思っていましたので…
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