二代目 桂 春蝶さんの「崇徳院」

ついに、二代目春蝶さんの「崇徳院」のメモを打ち込む日が来ました。
このCDの音源を聴いた時は、しびれてしまい、
速記をHTML化し、
自分のホームページに載せたいとまで思ってしまったほどです。

メモの元となったCDはこちら。
ビクター落語 上方篇 二代目 桂春蝶(3) 崇徳院/道具屋/河童の皿/一文笛
[録音] NHK「上方落語の会」第65回より 1971年(昭和46年)9月18日 北御堂津村講堂にて収録


二代目春蝶さんは、
私が勝手に命名している「崇徳院」の“松鶴型”における、
エスプレッソ的な存在で、彼を凌ぐもの知らなかったものですから、
手を出すのが怖かったんです。ここが行き止まりなんだと…。
しかし桂文太さんの「崇徳院」を聴いたら、
春蝶さんの次の世代の「崇徳院」がちゃんとあるんだなと思い、
文太さんの崇徳院をレビューしたくて、春蝶さんのものに
取り掛かろうと思い立ちました。

例によって長いメモです。
五代目文枝さんよりは短くなると思うのですが(^^;)


・見台の使用は無し?(春團治一門は使わないらしいので…)
 サゲも無し。「めでたく一対の夫婦ができました」※オチを言う時もあったらしい

・マクラ合わせて、21分6秒。驚異的な短さ!
 
・声は甘い、超イケメンな声です。
 ※田辺寄席に来ていた、往年のファンだったという女性が言うには、本当に格好良かったらしい

・マクラは、ある夫婦に三人の子どもが居て、真ん中の子だけ夫に似ていない…、
 というもの。西洋の小咄のような?

・冒頭、番頭は出てこない

・「の方に仕事に行っていた」と言う熊五郎。
…何故だろう、天下茶屋だと違和感があるのに。
地元の名前が出ただけで頬が緩む…というかリアルな設定だなと思いました!
本当に遠出してたんや、って。
 天下茶屋って中途半端な距離っていうか、
船場まで歩いて帰ってきて、同じ日に人探しさせられるなんて、
熊五郎にとっては、過酷な設定だなと。
 堺くらい離れてたら、たぶん、同じ日ではないハズ。

・「割りにらちのあかん」
メモが断片すぎて…熊五郎が、若旦那が死んだと誤解する場面かな

・「水くさい」
…どんな場面か思い出せないのですが、
旦那が頭を下げて熊五郎にお願いするから?
崇徳院では中々聴かない言葉です(たぶん)

・奥の離れの間→薬のにおい無し

「大きな声は地声だ」「へえへえへえへえ、そおでっか」
春蝶さん、ちゃんと言ってました!
このくすぐり、使ってないイメージがあったのですが、思い込みでした。
しかしどこをカットしたら21分で噺が終わるのか…

・若「店の子ども連れて高津さんへ行った」
五代目文枝さんと同じ様に、丁稚のことを“子ども”と言ってますね。

仁徳天皇の古歌をそらんじる熊五郎
まさか、春蝶さんもちゃんと言ってたなんて。
てっきりカットしてると思ってました(メモを取ったのがどんだけ前やねん)
う~…文太さんも言ってたような気がしてきました(汗)

・カステラではなく「羊羹」
五代目松鶴はカステラだったので…、文枝さんはどうだったのだろう?
春蝶さんは羊羹に戻ってますね。

・お嬢さんのお供は2、3人。上方にしては少ないほう。
4、5人とか、5、6人とかが多い。東京くらいの少なさだと思います。

・熊「英語使こて
五代目文枝さんのくすぐりが継承されてます(^^)

・料紙=猟師のくすぐり無し。さ~と「せをはやみ」の歌へ行く

・熊「なにさらす、この、ちょうちむす
五代目文枝さんは、たぶん言ってません…
ちょうちむすって、一体何なんでしょうね。
たぶん、お嬢さんに一目惚れしたと若旦那が告白したので、冷やかしたと思うのですが

・「辛気臭い、これやから、金持ちの子は~!ちゃらちゃらと」
熊五郎、若旦那の前で本音をぶつけすぎ(笑)
松鶴型は、熊五郎が若旦那に正面切って「ぼんくら」と言うくすぐりがある。
それを発展させたものか。

米朝さんは、熊五郎が若旦那と別れてから、一人になって、ぼやき言葉を言わせます。
これはこれで、熊が陰口を言っているようにも見えるので(速記を見たら吃驚する)、
お客さんにそう思われないよう、カラッとした言い方をするのがミソ。


・「何で“みどうさん”に行かさんねん」
通常、“生玉(いくたま)はん”と言っている台詞。
こういうお寺か神社が、高津宮の近くにあるんですね。

・障子貼る、の歌あり。石川五右衛門の歌は、たぶん言ってない。
松鶴型は「障子の歌」で、米朝型は「石川五右衛門の歌」です。
最近は、両方言うことが多いですね。松鶴一門の仁鶴さんがそうしたからかな。

熊五郎が崇徳院の歌を覚えている。上演時間21分の秘密はここ?
五代目松鶴―五代目文枝―二代目春蝶。
松鶴型の特徴。

米朝型は、熊五郎が思い出すまで時間がかかる。あれこれヒントが出て、
最後は、親旦那が崇徳院の歌を言い当てる
 明治大正期の「崇徳院」(二代目三木助、四代目松鶴)では、
ヒントが少ないのに、親旦那が言い当ててしまう。
「立ち聞きしてなはったな」というくすぐりはここから来ているようだ。

五代目松鶴が、熊五郎にこの歌を覚えさせる設定にしたのは、
歌のヒントが少ないのに、親旦那が言い当ててしまうこと、
熊五郎は仁徳天皇の歌をそらんじることが出来るのに、
崇徳院は覚えられないのは不自然だと思ったためか。

逆に、ヒントを別のものにして色々と小出しし、
そのやり取りでお客さんを楽しんでもらおうと思ったのは、
米朝さん、いや、師匠の四代目米團治がそうだったのでは…?

となると、
五代目松鶴は熊五郎を
「抜けている所もあるが無知ではない職人さん」
という設定にしたかったのかな。
 米朝さんの熊五郎は、
歌を忘れて、思い出すまでの過程が面白かったりします。
熊五郎に馴染みの無い歌は覚えられないだろうというリアリティと、
自ら妙なヒントを言う熊五郎が、
喜六っぽいような気もします。三百円と聞いて欲に取り付かれるあたりも…
これは、熊五郎に対する解釈の違いでしょう。

私が松鶴型の熊五郎に惹かれるのは職人肌だからなのかな。


・親旦那「分からんと言うたかて、日本人やろ?」(間)…客の笑い声
私が苦手なこの台詞、お客さんは別に平気みたい。。

・「おまはんには、去年の貸しがあったなあ」(間)…客の笑い声
間合いを取ってお客さんに笑わせるなんて、凄い。

・報酬…借金帳消し、三百円、借家五軒
三百円ってところに、米朝さんの影響を感じます。

・熊「よく患ってくれはった!
この台詞、崇徳院では、あんまり聴きません。
「宇治の柴舟」だったかな。
これも若旦那が恋わずらいをして、熊五郎が会いに行く話です。
昭和四年の「名作落語全集 第七巻」の速記にありました。
ここの熊五郎も堺から戻ってきた設定です。おお…
春蝶さん、勉強したんかな。

・熊のお上さん、超クール。もの凄い美人っぽい声。
草鞋は、五足+十足です。お櫃ご飯、お漬物無し。

・お上さん「日本人やろ?今は鉄道が出来て…」
という台詞。“鉄道”という言葉を出すのは、ちょっと珍しいかも。
大概は、「今は縦横十文字に道が出来たぁる」という台詞。

・しびれを切らした親旦那が「お上に訴える」
松鶴型の特徴の一つ。
米朝型だと、ここで「お礼が足らんのか?三百円出す!」と言うところ。

ちなみに、松鶴型の若旦那の寿命は、「あと五日」→リミット五日
米朝型は、「あと五日持たない、三日の猶予を与える」→リミット三日。です


・家に戻ってきた熊にお上さん「どうやった?」熊「あっかいな~お前
この台詞、めっちゃツボです。
熊五郎が、大阪のおっちゃんって感じがして(笑)
阪神が大敗した夜、応援に行っていた男の人が家に戻ってきて言った台詞みたい。

・熊のお上さん「二人、三人でも集まったら歌うんやで」
床屋・風呂屋以外でも言え、と命令(笑)。路上で呟くことに…

・熊五郎「(若旦那より)二時間早い
五代目松鶴の速記には、「(症状を言い連ねて)先に死ぬ」と言っていたけど、
二時間早いと云う言い方が面白い。
春蝶さんが作ったくすぐりなんでしょうか…?

・「魚屋はん!」→子ども「おっさん気ちがいや」
イワシ屋さんじゃないんですね。
子どもが、「チラシくれ」と言わないところに、
米朝型には無い、松鶴型ならではの古さを感じます。


・床屋の亭主「よったり(四人)さんほど待ってもらわんと…」
落語の中で無いと、死語になってる言葉が出てきました。
今でも言う人、お年寄りの中にはいるのでしょうか。
これ、紅雀さんも使う言葉です。
崇徳院では言わないけど(たぶん)、不動坊だったかな?


・熊「別に好きでもない(歌)」
仁鶴さんでも、この台詞あります。
プラスして「どちらか言うと嫌いでんな」と言うくすぐりになります。

・「来年から幼稚園だ
文枝さんと同じです。^^
教わったのかな?

・メモに「坊主」とあるのですが、
お坊さんと間違われるくすぐりではないと思います。(これは枝雀さん)
五分刈り→坊主になった、というくだりかな。

・親方「向いの床机に座った若旦那が“ええ男”」
“役者にも無いような”という台詞は無し?
こっちの方が良いような…。
崇徳院の若旦那は、イケメンに見えない…。

・「伏見に嫁入りしているお梅(乳母?)が…
春蝶さん、猪飼野でも、狭山でも無いんですね(笑)。
俺だけの崇徳院を作るぞという意気込みを感じます。

・「田中さん北海道へ。太平洋の鯨に聞いて来い」
“太平洋”と言うのは、仁鶴さんと一緒ですね。
ベーシックなのは、“紀州熊の浦”の鯨に聞いて来い、です。


・キセルの所は不明(;_;)音源のみの辛さ…

・熊「(略)春の心地して」 (相手の正体が知れ)親方「何を~
米朝さんのweb速記だと「ギャイッ!」ってなってるんですが(笑)
この「何を~」って云う言い方、
今の噺家さんでも使っているような気がします。

・「本家へ来い!」「母屋へ来い!」(急に声のトーンが変わり)めでたく一対の夫婦が出来ました。


二代目春蝶さんの崇徳院は永久不滅です…(感想)



追記(2011年10月21日)
後日、もずさんから「ちょうちむす」とは、腸チビス(腸チフス)のことではないか、とご意見を頂きました。(><)有難うございます!

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

湖涼

Author:湖涼
ブログ管理人(湖涼)の連絡先
jaimo.koryou★gmail.com (★を@に変えて下さい)
@koryou_ツイッターです。
2つのアクセスランキングに参加しています。
にほんブログ村 演劇・ダンスブログ 落語へ
↑にほんブログ村

最新記事
最新コメント
リンク
カレンダー
06 | 2017/07 | 08
- - - - - - 1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31 - - - - -
カテゴリ
月別アーカイブ