田辺寄席《新・じっくりたっぷりの会―笑福亭 由瓶の段》

2011年9月17日(土)

桂 文太   「開口0番(平行線について)」
笑福亭 飛梅 「道具屋」
笑福亭 由瓶 「阿弥陀池」
桂 文太   「崇徳院」
~中入り~
笑福亭 松枝 「袈裟御前」
笑福亭 由瓶 「足袋と帯」

宝くじが当たったような興奮!
皆面白い、とっても良い会でした。


JR南田辺の駅に着いたら、どしゃぶりの雨。。
お客さんの入り、どうなるんやろ~と思っていたら、
意外と入ってました。紅雀さんの段と同じか、僅かに少ないくらいか。
77人くらいでしょうか。小クイズを出した人の数は、Aが四十数人で、Bが三十数人。
携帯鳴らす人がいなくてほっとしました。
凄い拍手の量で、お客さん、温かかったです(^^)


開口0番は「平行線について」
文太さんの娘さん(24と21のご姉妹)の話でした。
お姉さんはやや真面目で、妹さんが面白い子だと。
授業参観の図画の時間に、先生が「平行線を書きましょう」。
正解はない、子どもの自由な発想にまかせる先生のやり方に、
文太さん大感心。しかし娘(下の子)の書いた絵に教室は大笑い。
他に病院の話など。
 こうやって聴くと、身近にあったお話しをされていて、
先月の開口0番で、ご自身の芸歴を語られたのは、
かなりレアだったのかな、と思ったり(まだ二回目ですが^^;)
 最後に、携帯電話の注意を呼びかけられたのが印象的でした。
こういうアナウンスはやっぱり大切だし、あったら嬉しいです。


開口一番は、飛梅さん。
女の人かなと思ってました。25、6に見えたけど同じ歳(^^;)
ふっくらしてるけど、ぷよっとはしていない、スポーツしてたのかな?
自己紹介は事故照会?に。誰のお弟子さんなのか分からず、
アンケートに書いてしまったのですが、ちゃんとチラシに書いてありました。orz
松枝さんのお弟子さんです。名前からすると、梅團治さんが師匠かなと…
 「道具屋」は、しっかりはっきりした口調で、とても好印象。
前座特有の、頼りない感じがしません。堂々とした話しぶり。
ちゃんと笑わせてくれて、嬉しかったです。
前座で笑わせてもらえるのってやっぱり少ないので…
 夜店出しに行く途中、金魚すくいをする子にアドバイスをする所が可笑しかったです。枝雀さんほど長く話さずに(たぶん)、輪ァに金魚をひっかけるねん、とかそんな台詞でした。時間の関係か、掛け軸のくだりは無し。
主人公に、商売の仕方をあらかた教えるのは、本屋のぜんさんで、隣の下駄屋さんではなかったです。この辺りで、いつも見慣れている「上下(かみしも)」と逆だったような気がしたのですが…気のせいかな。
木刀をひっぱりっこする所は、もう少しだけブルブルして欲しかったです。
気になったのは、そこだけで、他は本当に楽しませてもらいました。
単に上手いだけじゃなくて、ちゃんと自分の呼吸を持っているなあと思います。


お次は、由瓶さん「阿弥陀池」。
 マクラは、田辺寄席に呼んでもらえて光栄ですという言葉を。これは紅雀さんも言ってました。37年やってる寄席ってやっぱり凄い。それから、NHKに出たという話題にひっかけて、西宮?にあるラーメン屋さんの女将さんに、ダメ出しを言われた話を。芸人さんを食べ物にたとえる女将さんが凄い(笑)。帰ってよく考えたら、当たっているなあと。今日は、それにならないよう頑張りますと仰って本題へ。
 NHKの新人賞の時に出されたバージョンでしょうか。阿弥陀池を、前半かなり切り込んでいます。主人公とご隠居の出会いのくだりは無しにして、ご隠居に阿弥陀池のダジャレを教えてもらった直後からスタート。「なんでんねん、それ!」と主人公が、下らないシャレを聞かされて怒っているところから。「馬の耳に~」「○に小判」、これ、こごろうさんも言ってました(吃驚)。「しん猫を突いて、nyaー」…!これも同じです。一門の垣根を越えて使っているんですね、う~ん、凄い。一生懸命、干支を思い出しながら、動物を口走る主人公。これ、ほんまに由瓶さんが思い出しながらやっているように見えました(笑)。頑張れ~って思いました。短い時間で主人公がヒートアップしてきたので、お、おおおお?!と、思ったり。う~ん、でもモタレ(中トリの前)としては、これで良かったのかも。兎に角、いっぱい笑わせてもらいました。
両手を肩まで上げて、「笑い?」という仕草の前後に、舞台に向かって左手の方へ、膝で立った姿勢で、手を真横に伸ばされたのですが、その瞬間が何とも言えず可笑しかったです。一体どういう場面でそうなったのか…。「西の米屋に…」と言う時の台詞の仕草なのでしょうか?一回目は笑えて、二回目はあれ?って思ったのですが。あと、義理の弟が死んだと思って泣き出す友人を見て、主人公が「あれあれ?」という表情をして、口元?で両手の指をぴこぴこ動かしたところが面白かったです。アバウトなところも含めて芸人さんらしい(笑)。紅雀さんとキャラが被るという発言が2年前ありましたが、今はその気持ちが良く分かります。体当たりの高座。まあ見た目が違うんやから…。本音を言えば、紅雀さんの方がやや古典的というか保守的…かなと(自分で書いていて笑いそうになった)思います。


お次は、文太さんの「崇徳院」。
イヨ!待ってました(言えないので、心の声)
予想通り、松鶴型の「崇徳院」でした。^^
米朝型の「三百円やろうやないか」と旦那が言って、熊五郎が欲に取り付かれる場面もありませんし、
お上さんが「肩(運)の悪い夫婦やからしゃ~ない」と言う場面もありませんでした。
冒頭は、仁鶴さんよりも米朝型の設定の導入は控えめですが、
歌を思い出すところ、熊五郎がやつれていく様は、米朝型を取り入れている感じがしました。
テキスト的には仁鶴さんよりも濃い松鶴型です。
文太さんご自身の工夫と思われる箇所もかなり入っていました(これが一番嬉しい^^)
・始まりと終わりから
見台アリで、サゲは「割れても末に買わんとぞ思う」という鏡が割れるもの。
鏡が割れるサゲは珍しくなったように思うので嬉しい。
・他に、熊五郎が「地声です」というくすぐりや、
熊「へえへえへえへえ、はあ~そうですか」若「まだ何も言うてへんがな」
これは、米朝型には基本的に入っていないものです。
 でも「いんじゃもん」という発言は、米朝さんが有名ですね。
・薬の臭いがぷ~んとして(米朝型)も無かったように思います。
・「英語使こて」は、熊が若旦那に言うくすぐりですが、
(米朝型には無い)、何と文太さん、親旦那に報告する場面でも使って、
かなり笑わせてもらいました。2回使うなんてずるいです(笑)。
・障子貼るという歌の後に、石川五右衛門の歌、その後にもう一つ歌が出てきたのですが、
笑い声で聞こえませんでした。「どんどん遠ざかるなァ」と言っていたのですが。
・印象に残ったのは、少ない台詞や、短い間合いで、
風景を想像させるという、文太さんの話し方!
「雑踏の中」で「せをはやみ~」って言うのは恥ずかしい、
もうたったこれだけで、行き交う人々の姿が想像できました。
枝雀さんは逆に長い事、主人公に歩かせますよね。
ここで笑いを取りたいと言う思惑があったからだと思いますが、
短い時間でもいけるんだ、と思いました。
・たった一点、残念に思ったのは、
子どもが沢山付いて来た、という熊五郎の台詞の時に、
文太さんの視線が若干、上を向いていたこと。ここは矢張り逆でしょう。
・一番凄いと思ったのは、床屋に入ってキセルを吸う場面。
今まで見てきたやり方は、熊五郎がオドオドして、周りの様子を伺って、静かになったところへ急に「せをはやみ~!」と叫びます。これは、くすぐりの飛び道具です。ナイフに近い。
 文太さんの場合、「せをはやみ~」と叫ぶ声が、今まで私が見た噺家さんよりも小さかった。年とともに大きな声は出にくくなるのでしょうか。それをカバーする為かどうか分かりませんが、熊五郎がキセルを持ったまま、口ぱくで周りのお客さんたちと楽しそうに談笑するんです。その場面が凄く可笑しくて、他のお客さんたちも沢山笑っていたように思います。それで急に「せをはやみ」と。とどめを差すんじゃなくて、プラスアルファといった感じです。一歩引いたところで、お客さんを楽しませるやり方があったなんて、本当に驚きました。
・熊五郎のお上さんの出番も少なかったし、お嬢さん側の棟梁風の男の出てきかたも、お客さんを割り込んでじゃなくて、すっと出てくるやり方。それでも、私の頭の中で、凄い場面が広がっていって、想像するゆとりを与えてくれると言うか、本当に感動しました。少ない台詞の中で、短い間合いの中でも、お客さんを噺の世界に連れて行けるということを、まざまざと見た思いがします。どうして文太さんにはお弟子さんがいないのか、残念でたまりません。


中入りに、飛梅さんが出てきて「ここに座ってもいいのかどうか分かりませんが」と、ちゃっかり高座の上に(笑)。景品が当たる小クイズの紙を、中入りが終わるまでに提出するよう、アナウンスがありました。先月、田辺寄席に来た時は、アナウンスは無かったです。やっぱりあると嬉しいですね。出来れば、どこに提出するのかとか、お茶とお菓子も外にありますと言ってくれた方が良かったかも。(もしかして言ってくれたかもしれませんが^^;)。以前よりも、お客さんに対して親切になっているなあと思いました。
 飛梅さん、この後、帰ってしまい、小クイズの答え合わせは、トリを取ったばかりの由瓶さんがしました。予想外のサプライズだし、由瓶さんは汗だくで皆さん笑ってたけど、早退するなら、身代わりのお手伝いさん(同期の子や後輩)を置いていくべきだったのでは、と思います。


中入り後は、松枝さん。初めて見る噺家さんです。声量は、以前、田辺寄席で聴いた米二さんと同じくらい。やや小さく感じました。若い時の話などをポツリポツリと。落語会の手伝いや出番が終わった後は、松鶴師匠から「休憩してきてもいい」と言われて、仲間と外へ行きますが、お金が無いので、どこにも行けず(笑)。若気のいたりで、行き交う女の人の容姿を見て点数をつけて、仲間と一緒に小声で盛り上がった、と。話の終わりに出てきた、モデルさんの一言が、女の人の逆襲の一手。これには笑ってしまいました。「袈裟御前」は、女の人が凄惨な最期を遂げるもの…という事で、松枝さん、今とは違う時代で…ということを強調。噺自体は短いのですが、時々脱線をされて(そこがまた楽しい)、楽しませてもらいました。男の人が恋患いになって、人妻に懸想をする。男の人の気持ちの辛さや、病気になった思考回路をちゃんと語ってくれたのが嬉しかったです。これがなかったら、主人公は本当に酷い人間だという印象が、お客さんの頭の中に強く残ってしまい、噺の良さが伝わらなかったかもしれません。袈裟御前の悪夢を見る主人公、ここはもう少し引き伸ばしてもらいたかったかも。罪悪感が残っていて苦しんでいるんだという事を明確にすべきです。サゲのぐだらなさ(松枝さんは、お客さんは聴いたら怒るかも、と言っていましたが、私は好きです)は、ちょっと重たい雰囲気から、軽いところへ着地するものとして使うには持ってこいだと思います。トリ前のモタレとしては、本当にいい仕事をされたように思いました。重すぎず軽すぎず、長すぎず短すぎず。本当に難しいポジションです。


トリは、由瓶さん「足袋と帯」。開口0番の時、文太さんの紹介で、彼の自作だと言ったように思うのですが、大トリに自作の落語を持ってくるなんて、凄すぎます。余程の自信が無いとできません。恐らく、別の会で何度か高座にかけ、お客さんの反応を見て、出されたのでしょう。新作の落語なんで、余り内容を語ってはいけないと思うのですが、本当に面白かったです。笑いあり涙あり。涙の部分も深刻になりすぎず。笑いの部分が多かったです。あらましを言うと、同じ芸歴の噺家同士がいて、一人はホールで独演会を開く売れっ子、もう一人は同じホールで安い勉強会を開いています。それが同じ日の同じ様な時間帯で…と、設定を聞くだけでワクワクしてしまいます。本当にこのワクワク感がずっと続いて、この先どうなるんだろうとドキドキして聴きました。主人公の後輩の「●瓶」という若い噺家さんがツボすぎて(笑)。しっかりしてるんだか、頼りないんだか。こういう噺家さん、どこかにいるような気がしてくるから不思議です。勿論、主人公もその同期の噺家もそうですが、よく動くのはこの子でしたから、余計に愛着が(笑)。もう名前からしてノックアウトされました。この子の性格、はっきりと分かりにくいところもあるんですが、そういうざっくりした描き方好きです。きっとこういう子なんだろうなとか想像するゆとりを与えてくれるので。でも、粗彫りすぎると、一体どういう子なの?という思いもわくので、難しいところですね。このまま行くか、もう少し、こういう子なんだよというポイントを付け足してくれても良いんじゃないのかなと思いました。ここまで来るともう●瓶くんのファンですね(笑)。噺の筋と同じように主人公には申し訳ないことになってしまいました。でも主人公の人間くささ、懐の深さの出し方は、本当に良い塩梅で良かったです。こういうドジな人の方が好きなので。ファンの数こそ違えど、同期の噺家と同じ様に愛されて生きていくのだなあと思いました。劇中で、お客さんがちょっと騙されてしまう場面もありまして、すっかりそこで面食らってしまいました。浮いた空気をすぐに元に戻す腕もあるから、凄いです。こういう噺が自分で作れる噺家さんがいると、本当に、落語作家がいるのだろうかと思ってしまいます。いや、要るから居るんでしょうけれども。兎に角、由瓶さんのこの一席は最高でした。ご自身の内面の一部をさらしたような…落語はやはりそこに尽きます。噺と話し手のコラボレーションが奇跡を生むんです(笑)。パーフェクトじゃないけど(またそこがいい)、本当に将来性を感じさせる噺ぶり。2年前の「宿屋仇」を聴いた時は、こんなに感動をさせてくれる人とは思いもしませんでした。いつ化けたのだろう…


トリが終わると、「笑呆亭」のお時間。小クイズの答え合わせと、クイズに当たった人たちの中から景品がもらえるという趣向になっています。景品が小さくなると、クイズに外れた人の紙も混ぜてしまいます。小クイズの紙が入った箱に文太さんが手を入れて、それを司会者に渡すという仕組み。いつもは前座さんが司会をするのですが、(前回は、小鯛さんがプチハプニングを起してドキドキでした・笑)、この日は飛梅さんが早退したので、何とトリを終えたばかりの由瓶さんが汗だくでご登場。もの凄い拍手の量です。クイズの答えを読む由瓶さんに文太さんが「流石ええ声してるなァ~」と散々ちゃちゃを入れて、中々先を読ませません(笑)。景品が当たった人は挙手をするのですが、そこでも盛り上がりました。和歌山から来ている人や、タオルを首から下げている人も、思い出に残る良い会になりました。由瓶さん、本当にお疲れ様でした。でもこれでめっちゃ株上がりましたよ。田辺以外でも余波で上がるといいなあ。(追記)中入りの時に、「中入りィ~」という声がして、それがよく通るとても良い声でした。由瓶さんの声だったのでしょうか…?

※ちなみに、大クイズ(と私が勝手に命名している)は、アンケート用紙にくっついている設問です。これも景品が当たるものだったと思います

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由瓶さんの阿弥陀池は、パワーフルですよね。
女のぼんさんが尼、じゃあ男のボンさんはプロと言うのが変ってて面白いです。
私もこの日ワッハで6代目松鶴の崇徳院をCDで聞き、松鶴型の学習をしました。やはり文太師は松鶴型でしたか?
松枝師はブログによると、喉をいため色々治療しておられ、だいぶ声の調子もよくなってきたと書いています。
彼の書いた本のタイトルになっている、ため息坂・口笛坂を、もうじき実際に通行出来ると思うと楽しみです。
由瓶さんは、神戸屋パンの工場の近くに住んでおられ、非常に安くパンがゲットできるので、家がパンだらけらしいです。神戸屋パンって、なんか紅雀さんと縁があります。

もずさんへ

 阿弥陀池はいつもパワー系のような気がします。あ!そういえば、「辰~!」と叫ぶ台詞はなかったような(これは、こごろうさん―雀五郎さんですね)。女の坊さんが「アマ」で男の坊さんが「プロ」…聞き逃したのでしょうか?記憶がすっかり抜けてます(>_<)ごめんなさい。神戸屋のパンの話は聞いてみたいですね。紅雀さんと全く違う内容だと思います(笑)
 六代目松鶴さんの「崇徳院」いいですよね~。声に温かみがあって…。文太さんは、私の勝手な区分だと、松鶴型にあたります。ただ、米朝さんのくすぐりもちょこちょこ入ってきていますので、必ず但し書きが必要です。
 松枝さん、ポリープの治療をしたと言っていましたね。この間、福笑さんと松喬さんと共に三人会をされていたので、大分良くなって来ているのでしょうか。ため息坂・口笛坂は無学亭の傍なんですか?私、知らずに通ってました^^;
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