鳳仙花

韓国の民話に、「立ち切れ線香」と、
ちょっと雰囲気の似ている話があったので、メモしておきます。

「立ち切れ線香」は、笑福亭の祖・初代 松富久亭松竹(しょうふくてい しょちく)が、
江戸時代(文化3年・1806)の笑話集「江戸嬉笑」の中に収められた「反魂香」を元に作ったとされています。


落語の「反魂香」(高尾)と、内容が違うのでご注意を。
上記の噺は、死んだ奥さんに会いたくて、男が奔走する噺です。


「江戸嬉笑」の『反魂香』では、
内容が明らかに、「立ち切れ線香」なのに、
三味線が鳴る場面が無くて、
普通に、死んだ小糸が出て来てます(びっくり)。

小糸「もう帰らないといけません」
若旦那「待ってくれ、何でや」
小糸「お線香が切れてしまいました」(※ちょっと言葉を変えています)

いつ頃、小糸が出てこなくなって、代わりに三味線の音色のみが出てくるようになったのでしょうか。

実は、初代・桂文治が「江戸嬉笑」の『反魂香』にアレンジを加えて、噺を長くしてるんですね。
(彼が残した「落噺 桂の花」に『小糸の幽霊』という題の噺あり)
小糸は、若旦那(とはっきり書いていませんが…)に、三味線を作ってとお願いします。
十四日後に三味線が出来て、若旦那が持って行った時には既に亡くなっていて、
四十九日も過ぎていないから、魂はこちらにある、お仏前に供えたら…と、お梅が言います。
で、線香を焚こうとすると、煙硝が上がって、ヒュウドロドロ。仏前(位牌?)から小糸の声で、端唄が聞こえる。ああ、懐かしいと若旦那が仏壇に近寄ると、線香が切れてしまった(小糸も居なくなった)。

小糸は姿を消して、声のみの出演となっています。
でも、三味線を持ったまま亡くなった、三味線が独りでに鳴り出す~、というものではありませんね。
やはり、松富久亭 松竹が、初代・桂文治の没後(1815年)に、
さらにアレンジを加えて、そうしたのでしょうか。

明治24年(1891)の落語本では、既に現在の形になっていて、
小糸の悲しいエピソードが入っています。


はっきりとモデルとまでは言えないのですが、
韓国の民話に、ちょっと良く似た話がありまして、
「鳳仙花」という話なんです。

元の時代に(古い!)、高麗の領土が奪われまして、
皇太子が人質となって、元に連れて行かれるんです。
異国の地で寂しく過ごしていると、
懐かしい、故郷の音色が聞こえてきて、
琴を弾いていたのは、鳳仙という女性でした。
彼女も元に連れてこられ、琴の名手なので妓女(芸者さん?)してたんですね。
二人は恋仲になるんですが、
皇太子が元の皇女と結婚して、高麗に帰って王にならないといけない日が来て、
二人はバラバラに。
皇太子は、きっと迎えに行くと約束をするのですが、
父王との軋轢もあって、中々約束を果たせずにいて、数年後(早!)
夜、王となった元皇太子の耳に、懐かしい音色が…。
隣で寝ていたお妃は、聞こえない様子。

昔が思い出されて、何とか、鳳仙を探そうとするのですが、
見つかったのは、鳳仙を姉の様に慕っていた女性(物乞いになっていた)で、
鳳仙は、ずっと貴方を待っていて、ご飯も喉を通らずに、
痩せて、最期は琴を弾きながら、爪から血を流して、その上で死んでしまった、と。
鳳仙と琴は一緒にお墓に入れました、と言うんですね。

王様は凄く後悔して、鳳仙のお墓参りをするのですが、
そこに咲いた花が綺麗なので、種を高麗に持ち帰りました。
で、それが鳳仙花。
待ち人がいる印に、女性がその花の汁で、爪を赤く塗るのは、
そういう話があるからなんだよ、という民話でした。
(余談ですが沖縄にも花の汁で爪を赤く塗る風習があります)


話の仕立ては違うんですが、小糸と鳳仙って、
ちょっと被って見えるなあと思いまして。
中国にも似たエピソードがあるのかな?
死んだ恋人の楽器が勝手に鳴る(聞こえる)というような…。


民話と落語の違いは、物語のハイライトの違いで、
「鳳仙花」だと、鳳仙の妹分が、姉がどういう風に亡くなったのかを王に告げる場面。
琴の音色は予兆です。
「立ち切れ線香」も同じく、小糸がどういう風に亡くなったのかを語る場面、
ですが、三味線の音は、サゲ前の演出で、お客さんをドキッとさせます(たぶん)。

民話は、目上の人が年下の人に語って聞かすもので、そこに金銭のやり取りはありません。
落語は、噺家と観客で、ちゃんとお金を取ります。最後まで引っ張らないといけないんですね。

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