8月動楽亭昼席

2011年8月11日(木)動物園前 そこそこ席が埋まった感じ

桂 吉の丞 「時うどん」
桂 佐ん吉 「犬の目」
桂 紅雀  「向う付け」
立花家 千橘「井戸の茶碗」
~中入り~
笑福亭 銀瓶「書き割り盗人」
桂 ざこば 「天災」

千橘さんの井戸の茶碗が…!!
渋くて良かったです。
紅雀さんは、まあまあ受けてました(見方が冷たい)


 吉の丞さん、「動楽亭昼席はいつもは10日までで、米朝一門しか出ませんが、今月はお盆スペシャルということで、11日~20日は追加&米朝一門外の噺家さんをお招きしています」と。「歴史に立ち会える貴重なお客さんですよ」と(笑)。それから、いつもの様に「僕は前座ですので一席軽~くお付き合いのほどを」と。こうやって文字化したら、何ともない言葉です。でも、吉の丞さんの「軽~く」という言葉にいつも引っかかります。全力を出さないので…と聞こえてしまうのです。吉の丞さん、暑い最中に「時うどん」。お客一人バージョンです。何となく、二人バージョンの方が向いているような気がするのですが。主人公と店主の言葉のやり取りに、可笑しさを感じる部分が少ないのです。二人バージョンなら、お馴染みの喜六清八が出てきますし。(それでも最後は店主とのやり取りで可笑しさを出さないといけません)。二人バージョンにこだわるのは、「千早ふる」や「肝つぶし」が凄く良かったので、コンビみたいな二人組みが出た方が、吉の丞さんに合うのかなあと思うからです。ちなみに、佐ん吉さんは一人バージョンですが、こちらの方が性に合っているように思います。私の中の「時うどん」の頂点に立っているのは佐ん吉さんです。


 佐ん吉さん、薮医者の語源についてのマクラ。これは初耳。でも、噺家さんの言うことは、たまに信用できないことがあります。騙されるか信じるかはお客次第。私は今回信じます(^^)。薮医者のマクラから「犬の目」へ。う~ん、「犬の目」は吉の丞さんの方が良かったなあ。。ネタを入れ替えてやって欲しかったです。吉の丞さんの「犬の目」は医者がちょっとおちゃめな感じで変ってたんですよ。佐ん吉さんの医者は、優しそうで、ちょっと変った手術?をしそうにない感じがするんです。これも噺家さんの人柄が出るんでしょうね。これはいいなと思ったのは、医者の助手・木村くんの出番が一つ多かったこと。木村くんが、慌て者という設定を、前もって伏線にしてお客さんにそれとなく知らせているのです。これは良い演出だなと思いました。吉の丞さんには無かったので、ご自身で入れたのか、一門外のルートで仕入れたものだと思います。


 紅雀さん、マクラはとある芸能人のツイッターからフジテレビ前のデモに発展した話からデコポンの話へ。発音がいつも気になります(笑)。私は平坦に「デコポン」と言うのですが、紅雀さんは「デコ」(おでこのデコの発音)+「ポン」なのです。大げさに言うと「デーコ」(やや上向きの発音)+「ポン」。それから、昔は字をかける人の方が少なかった、という話。(江戸時代は識字率が高かったのでは?と思ったのですが、wikiを見るとけっこう複雑^^;。どの程度で「字が書ける」と言えるのかで割合が違ってきます)。紅雀さんのお祖母さんも字が書けない人だったと(明治末から大正生まれかな?)。「向う付け」は後ろの二人連れの女性がかなり笑ってました。調子が良いように見えましたが、テレビで言ってた、お上さんはあんなに賢いのに、何で自分のところに嫁いできたのか…という呟きはなかったです。ここは、気が向いた時にしか言わないみたいですね。ご隠居さんの顔の上にのっている白い布(きれ)を摘んで上げて、話しかける場面も、大声というほどではなく、いつもよりボリュームが小さい感じでした。だからといって、噺そのものに影響したとは思えませんでした。本当に良く受けてましたので。帳場に来たスペシャルゲスト?は、高岡蒼甫さん(マクラに出てきた人)と、菅直人首相。首相には「こんなところに来てないで、はよ仕事しなはれ」。仕事がまわってないと専らの噂の人だったので、けっこう受けてました。扇町寄席(最近再放送があった)では鳩山首相が出てましたが、一人目のゲストだったので特に笑いを取らず、二人目に名前の長い国籍不明?の外国の人で「誰やねん」と言う流れでした。


 ついに、米朝一門以外の噺家さんが登場!立花家 千橘(たちばなや せんきつ)さん。四代目だそうです。師匠は露の五郎兵衛さんなので、露の一門ということでしょうか。60過ぎくらいに見えました。マクラはさくっと。ここに呼んでもらえて嬉しい、と。家にいるよりどんだけ良いか(ちょっとうろ覚えです)。「家にいるより…」という所でお客さんくすくす笑い。言い方が寂しそう(普段は暇なのでというオーラ)で妙に可笑しかったんです。噺は「井戸の茶碗」。家に帰ってから調べました(^^;)。「強情」と噺の構成が似てますね。二人の強がりの間に立たされた主人公が右往左往する噺です。「強情」は職人気質の頑固さ、「井戸の茶碗」は武士の頑固さです。ぽつりぽつり、とまではいきませんが、とつとつと語る感じで、声もそんなに大きく感じません。まだ聴き慣れないのか、ところどころ言葉を拾えない箇所がありました。それでも、千橘さんの噺の世界に引き込まれて、本当に素晴らしい噺を聴かせてもらったなあと云う思いでいっぱいになりました。兎に角、紙屑屋が良かったです。ストレートに言葉が出なくて、手の仕草が優先して忙しく動くんです。下町の職人さんらしいなあと思いました。ちょっとそそっかしい様な雰囲気が何とも言えません。お金を半分こしたらいい、と言う台詞の合い間に「道頓堀みたいにスパッと割ったらええ」というような言葉が入ったのですが、ここがとても気になります。上方落語メモの「井戸の茶碗」にはありません。合い間合い間に、美味しい台詞を入れているような気がします(それが職人さんならではの早口で聞き取りにくいのです)。最後の最後まで飽きさせずに、ずっと噺に引き込まれっぱなしでした。どんなに出来た噺でも、「これからこうなるんだろうな」と思うと、集中力が途切れます。そうならなかったのは千橘さんの話っぷりが良かったからなんでしょう。惜しいと思ったのは、仏像を買い求めた侍が、少し年を取って見えたこと。浪人と同じ年に見えました。実際は、浪人の娘より少し年が上で、青年くらいなのでしょう。血気盛んなエピソードが入ったのは、侍の若さを物語るものだったんですね。それにしても、これが中トリなんて勿体無い。今から思えば大トリに出して欲しかったです。


 中入り後は、笑福亭 銀瓶さん。折角来てくれたのに、モタレに出すとは勿体無い。米朝一門の中堅どころを、中トリ、大トリで出しているのだから、銀瓶さんも同じ扱いをして欲しかったです。マクラはたっぷり。ざこばさんについて。鶴瓶師匠に教わったネタよりも、ざこばさんに教わったネタの方が多いのだとか。鶴瓶さんに対抗意識を燃やすざこばさんが可笑しかったです。お年玉の金額とか、弟子の数とか。ざこばさんに振り回されたエピソードをいくつか。ここで大分盛り上がりました。その分「書き割り盗人」が大人しく見えてしまったのが残念。こごろうさんの絵の描き方が丁寧なので、どうしても他の人が雑に見えてしまいます。銀瓶さんは、いくつか絵を描く場面を、主人公がご隠居に注文をつけている台詞だけにして、上手く回避?(これがざこばさんのやり方かもしれません)。福丸さんも絵を描く場面が物足らなく感じたものの、別の部分で笑いを取っていたので、穴が埋まった感じはしたのですが…。床の間の縦線を描く時、いつも「それだけの高さで床の間が描けたのか」と思ってしまいます。思ったよりも縦線が短いんですね。一体どこが見所だったのか(最後、倒れたまま客席に手を振るという、ざこばさんが怒ったあの場面?)…モタレは本当に、噺家さんの特徴が出ないまま終わってしまう人が多いように思うので、難しいポジジョンなんだなあと思います。当たり障りのない無難なネタを選ばないといけないのかもしれません。去年の春に見た「宿題」は衝撃的に面白かったので期待していたのですが…。う~ん、「看板の一」やって欲しかったなあ(持ちネタかどうか知りませんが、やんちゃな子とベテランの味をコンパクトに出せるいい噺だと思います)。


 大トリは、ざこばさん。銀瓶さんが、動楽亭には幕が無いので…と言った台詞に一言「あるやん」とご立腹。余り使われていないので、私も忘れていました。雀五郎さん入門10周年記念会(こごろうさんとの二人会)で使ってたかなあ。ざこばさん、最近たて続けにお孫さんが生まれたようで、娘さんが交互に来て、やかましくてしゃ~ないと。泣いてばかりで、まだ可愛いと言えるくらいの歳じゃないんですね。男の人って子供が可愛いと思えるまで時間がかかるらしいのですが、そうなのかも。イライラしたとき、赤ちゃんにチョップくらわしたい…「バーン!」という仕草を連発(汗)。ここでちょっと引いてしまいました。暴力的な雰囲気をにおわせて、「天災」の主人公がするっと出てきます。ざこばさんがすると、ちょっと生々しいですね。ご隠居さんは「中川」さん。米朝師匠の苗字です。面白かったのは「便器に頭つっこむ」(?)とか言うところ。心学の先生、形無しです。そうばさんの時は、こういう所あったかな。よく覚えていません。「杏仁豆腐をちぎっては食い、ちぎっては食い」という所があったのは確かです。でも、ざこばさんは、このくすぐりを使いませんでした。元々無かったのを、そうばさんかその先輩かが付け足したのでしょうか。「天災」はざこばさんのものが評判良いようですが、私はそうばさんで衝撃を受けました。未だ彼を超えるものに当たりません。その時はマクラから笑っていましたし、会の雰囲気もあったのかもしれませんが…。落語を見始めて間もなかったので刷り込まれた可能性もありますが、「天災」「狸賽」はそうばさんが不動のままです。ざこばさんの噺は、少し気が弱くて嘘をついてしまう人物が出てくるものが好きです。「猫の災難」は本当に最高でした。「天災」は、キャラが被っている気がして、それでも本当はこんなに乱暴な人じゃないのになあと勝手に思ったりして、もやもやしてしまいました。


※2011年8月19日に感想を書き終えました

コメントの投稿

非公開コメント

字が書けない人

こんにちは
私の祖母は小学校の低学年で、学校に行くのをやめてしまった人でした。
明治28年生まれでしたが、それがさほどとんでもないことではなかったように聞きました。
でも娘が字を習うようになって、その娘の一人から字を教わったらしく、私の知っている祖母は書く事も読む事も出来ました。
ただその時代には字を書けない人が普通にいてはったという話を、何の不自然もなく聞けたのはそういう祖母のエピソードを聞いていたからかなぁと思います。
紅雀さんのお婆様は私の祖母よりはいくらかお若いのでしょうけれど、余り変わらない世代かもしれませんね。

にこさんへ

 にこさんのお祖母さんが明治28年生まれ!四代目米團治よりも一つ年上ですね。お祖母さんのエピソードを聞くと、やはり代書(屋)という噺が生まれるだけの時代を感じます。それにしても向学心にあふれた人だったんですね。祖父祖母の年齢って、親が長子か末っ子かで以外な数字が出てきたりします。ひょっとして本当に同世代かもしれませんよ。 ちなみに私の祖父は大正七年生まれで米朝さんよりもぐっと年上です(^^)。父が末っ子だったもので…
プロフィール

湖涼

Author:湖涼
ブログ管理人(湖涼)の連絡先
jaimo.koryou★gmail.com (★を@に変えて下さい)
@koryou_ツイッターです。
2つのアクセスランキングに参加しています。
にほんブログ村 演劇・ダンスブログ 落語へ
↑にほんブログ村

最新記事
最新コメント
リンク
カレンダー
10 | 2017/11 | 12
- - - 1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 - -
カテゴリ
月別アーカイブ