三遊亭小遊三「崇徳院」

三遊亭 小遊三(さんゆうてい こゆうざ)さんの「崇徳院」
図書館でDVDを借りました。
・「日本の話芸 落語編(三)」
・NHK教育テレビ「日本の話芸」1992年7月24日収録分

東京の「崇徳院」を動画で見たのは初めて!
三代目三木助も、志ん朝も、音源のみでした。
小遊三さんの「崇徳院」は、
基本的に三代目三木助のテキスト。
崇徳院の歌が書かれた短冊が風で落ちてくる場面があります。


一番驚いたのは、熊五郎が懐から紙?を取り出して、
それを見ながら「せをはやみ~(略)」と言ったところ。
東京の熊五郎は字が読める設定のようです。
上方は不明ですが、何か紙を見ながら「せをはやみ~(略)」を言ったりしません。
手ぶらで言います。

全体的にコンパクトにまとめているという印象。
それでも、ところどころで知らないくすぐりが入ってきて面白かったです。
・「若旦那がガキの頃、苛められているのを、あっしは塀に隠れて見ていた」
・熊五郎が「わかだんなあ~!」と歌舞伎っぽい口調で呼びかける
・あと五日しか持たないと言われている若旦那が意外と元気そうに見える
・しかしあんまり弱っていると(上方に多い)「瀬をはやみ 岩にせかるる 滝川の」という歌の説明が聞き取りにくい場合がある。若旦那は弱っているが、お客さんにしっかりと聞かせないといけないので難しいところ
・お嬢さんが連れていたのは、女中ではなく、婆や一人。
・若旦那と目が合ったお嬢さんが「ニコッ」と笑う。東京でお嬢さんが笑うのは初めて聴いた。
・「水も垂れる様なお方」を「ヒビの入った徳利」と言った。麻生さんの落語本のオリジナルかと思っていたら、実際に言う噺家さんがいて、ちょっとほっとした。ただ「潰れたミカンのような顔」という台詞が少しあいまいになったのが残念。熊五郎と親旦那の会話でも「徳利」しか出てこなかったので、ミカンは出さなくて良かったのでは。
・熊五郎の顔がお嬢さんの顔に見える若旦那
・親旦那が十足のワラジ、お上さんも十足のワラジを持たせる。
 「仁王さまの申し子みてえになっちまった」という台詞あり。
・熊五郎が「この辺に水のたれるのはありませんか」と言って人探ししていたと知った熊のお上さんが「お前さん、透けるような馬鹿だね」と言う
・熊のお上さん、口調はきついが嫌な感じない。二人のやり取りが自然に聞こえる。
・「お嬢さんを見つけてこないと家へ入れないから」と言った後で、
  熊を追い出すように、「歯ァ食いしばって行ってこい!!」とお上さんが言う。
・熊五郎が「瀬をはやみ(略)」と中々言えない所が面白い。「せ~ッ」「せ~ッ」しか言えない。
 すると「ちょいとお豆腐屋さん」と声をかけられる。「こんな時分に来るか」とツッコミ。東京の崇徳院に多い「納豆屋さん」にしなかったのは、夏らしい「豆腐屋」を出すためか。
・歌が言えるようになって「やりゃあ出来んだ、俺は」と台詞を拳を振りながら言う
・「恐ろしく子供がついてきた。(後ろを向いて追い払う手つき)紙芝居じゃない」
 二代目三木助の速記(明治43年)にはない場面で、五代目松鶴の速記(昭和23年)にはある。ただし、紙芝居ではなく、「気狂いや」とおちょくられている。上方では「気狂い」の他に「ちんどん屋?(チラシくれと子どもに言われる)」と間違われる事もあるが、気狂いという言葉がきついので、後年変えた台詞だと思われる。小遊三さんの「紙芝居(屋)」にも何かほのぼのとした言葉の響きがある。なお、上方の子供は石を投げてくる事が多いが、小遊三さんの噺にはそういった場面は無かった。
・熊五郎が床屋に入ってきて、客を割り込んで?座るような場面が面白い。「ちょいとごめん」という台詞が繰り返される。
・熊五郎が静かな床屋で突然「瀬をはやみ~!」と言って、周りのお客さんたちが驚く。
 「私じゃありません、この人です」と云う客の台詞は初めて聴いた。集団描写が優れている。
・ちなみにこの台詞を言う前にキセルを吸う仕草があるが、灰を落とした後、吸い口?を「ふっ」と吹く所が良い。
・熊五郎が静かな床屋で突然「瀬をはやみ~!」と言うのは二代目三木助の速記(明治43年)には無い。
・五代目松鶴の速記(昭和23年)にはあるが、静寂を打ち破るような言い方はしなかった?店に入ってくるなり「大きに、御免、どなたも。瀬をはやみ」と言って、客が「ああ吃驚した」と言う。静寂部分は速記しづらいので、文字化しなかった可能性もある。
・「水、たれてますか?」「風邪引いてよだれたらしてます」「おたくのお嬢さんお幾つで」「七つです」
 “よだれたらしてます”は初めて聴いた。鼻がたれているでも良かったのでは
・お嬢さんが何も喉が通らなくなった、という台詞で、「バスが通らない、電車が通らない」というお馴染みの台詞は無くなっていた。それで良いと思う。
・お嬢さん側のお頭(かしら)は「旅に出るから」髭を剃ってくれとはっきり言う。「旅に出るから」は初めて聴いたような気がする。「急いでいるから兎に角、髭を剃ってくれ」と云うニュアンスの台詞が多い。聴いていると、なぜお頭はこんなに急いでいるのか分かりにくいので、小遊三さんのように始めから「旅に出るから」と言った方が良いように思う。
・お頭は和歌山ではなく四国に行く設定。熊五郎が探している相手だと知るや、「あともうちょっとで四国に行くところだった」と言う。三代目三木助も四国へ行く設定だったように思う。やはり、「紀州・和歌山へ行って分からなかったら、熊野の浦の鯨に聞いて来い」というお嬢さんの父親の台詞は上方ならではなのか。
・お頭も「せをはやみ(略)」と言う前に、懐から紙を取り出してそれを読み上げる。東京の落語噺は識字率が高いのだろうか(新鮮)。
・お嬢さんの父親が出したのは莫大な懸賞金。三代目三木助は「四斗樽20本」で、志ん朝は「百円」。莫大な懸賞金と言われると、聞き手に金額を想像させる手法で中々上手くやったなと思う反面、幾らなんだろうという思いも沸く。
・「おめえを探して艱難辛苦」。熊五郎がお頭を捕まえて言う台詞。芝居の台詞は「艱難辛苦」のみだが、東京にこの芝居台詞が出てくるのは珍しいように思う。今ではそうでもないのだろうか?
・志ん朝では無くなっていた「暗闇から(熊五郎が)出てきた」という台詞が復活していて嬉しい。
・熊五郎が親方の胸倉を掴む仕草が、上方と違う。上方は両手首をクロスさせる人が多いように思う。東京は(?)、空中で自らセルフ握手する仕草。胸倉を掴まれたお頭が、右手で自分の喉を押さえているのも初めて見た。
・上方のお頭は、熊五郎と対の台詞「おのれに会おとて艱難辛苦は如何ばかり」と言うため、怒りの表情で熊五郎を見つめるが、小遊三さんのお頭は胸倉を掴まれても、相手が見つかった喜びの方が勝るらしく、嬉しそうな表情を崩さなかった。三代目三木助のお頭は、喧嘩腰だったように思う。この工夫は新鮮。お頭の懐の深さが感じられ、追い詰められた熊五郎と対照的。
・「(お嬢さんのいる?)店はすぐそこだから来てくれ」とお頭が言う。熊五郎は「俺が先に(お前)を見つけたんだから、お前が俺の店に来い」と反発。セルフ握手を引っ張りっこする。そこへ床屋の亭主が仲裁。「あんた身体弱っているんだから逆らっちゃだめだ、お頭は強いんだから」と。
・サゲの「割れても末に買わんとぞ思う」は、熊五郎の台詞だと思っていたが、小遊三さんは、はっきりと「お頭」の台詞としていた。

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