動楽亭昼席

2011年7月3日(日)動物園前(新世界)

桂 吉の丞 「強情」
桂 雀太  「替り目」
桂 紅雀  「道具屋」
桂 米左  「宿屋仇(やどやかたき)」
~中入り~
桂 雀松  「播州めぐり」
桂 米二  「くしゃみ講釈」


やっと紅雀さんの道具屋が聴けました。^^
昨日も今日も皆さん力演揃いでした。宿屋仇、良かったなあ。


吉の丞さん、6月の月末亭の時と同じぐらいの声量で噺を始めたので、嫌な予感がしたのですが(動物園はしっくりこなかったので)、「強情」は真っ直ぐな登場人物が勢ぞろいしていて、ぴったりだなあと思い、けっこう楽しく聴けました。あとはストレートだけじゃなくて、変化球も投げれるようになればと思います。「おい、嬶(かか)!木刀持って来い!」という台詞がツボでした。お金を借りた相手って両方とも棟梁とか親分っぽいですね。


雀太さん、マクラは酔った人のあれこれ話。ドームの話は何となく落ちが見えちゃったけど(以前聞いたことがあるのかな)、酔った雀太さんを心配してくれた通りすがりのおばさんが、思いがけない行動を取ったところは、ええ?と思いました。おばさんも酔ってたんかな。「替り目」は、がっつり面白かったです。噺に入ってから「まさか雀太さんの替り目が聴けるなんて」と、ときめきました。前座の次が「替り目」って!要所要所でしっかりと笑わせてくれます。それが紅雀さんの笑うところと微妙に違うので新鮮でした。奥さんに懺悔する場面を引っ張る引っ張る(笑)。「・・・・(沈黙)…嬶ァ!」この沈黙の長さが絶妙。何度か繰り返しましたが全く飽きません。この噺の難しさは、話し手の年齢が主人公に近くないと、笑いをいくら取ってもリアリティを真に感じにくいところです。空想上の夫婦のやり取りだと感じると、それだけで目が醒めてしまうので。既婚者で倦怠期を体験しているくらいの演者が望ましいのが実情です。雀太さんの「替り目」は要所をしっかり掴んでいるので、それを保持しつつ後は人生経験だなあと思いました。紅雀さんもあともう少しそれが欲しいです。


紅雀さん、「もの凄いねばり腰で」と、雀太さんの一席に苦笑い?でもちゃんと褒めてたと思います。たぶん、もう直ぐ出番だと思って着替えてスタンバイしてたら中々噺が終わらなかったのでしょう。「私のところは、ごくあっさりとした噺の方で」と『道具屋』を。冒頭の、おじさんが主人公を呼び出して、「お前の母親がさっきまで来ていてここで泣いてたで」という台詞はカット。主人公の親不孝者という設定を省きました。でも、これは後々になって正解だったなあと納得。主人公はもの凄く明るい性格なので、それに水を差すような設定はカットして良かったと思います。(枝雀さんもカットしてたのかな?)。道具商のおじさんと話をする場面は、掛け軸が分からなくて「忍者の巻物かと思った」と。これは初耳。それが後半、掛け軸を買い求める客に「よくこれが掛け軸だとわかりましたね」というくすぐりが入ります。むしろを引く場面は、こごろうさんは「とげとげが出ている方はお客さんに向けたらあかんやろ」と言っていましたが、紅雀さんは、むしろを二枚もらっているのにそれを並べずに、むしろを重ねて上に座っていたのでツッコミがくるというものでした。「人間、義理を欠いたらあかんで」という台詞は、一瞬もの凄く顔つきが渋くなったので笑ってしまいました。お雛様の首は、体とあべこべの方向を向いているというもの(佐ん吉さんの「落語家ごっこ」は出てきませんでしたが、紅雀さんが体を張っていて面白かったです)。短刀を買い求める客は、ヤクザの鉄砲玉のような人で「こいつであいつをやったろか」と呟きながら刀を抜こうとします。ツッコミも「お前を先にやったろか」。殺意に満ちた人が、夜店に来るのでしょうか。夜店を出している近所の麻雀荘で、ついさっき大負けしたのかな。一言フォローが欲しい所。「こういうものに限って掘り出し物がある」という台詞は多分お客の方が抜けたように思います。最後の客は「ここにおもろい道具屋が出てると聞いた」と、冷やかし半分で来るところが可笑しい。そういえば、枝雀さんは金魚すくいの場面がありましたが、紅雀さんはそれをせずに、走る子ども達を避ける仕草をして、夜店の賑わいを表現していました。こういう一瞬のちょっとした配慮が見ていて嬉しいです。


米左さん、マクラが不発?「…これはさっき言ってましたね」と言うのは常套句なのでしょうか。直前までネタを繰っていたのかなと思うほどマクラにスイッチが入ってません。二言三言で噺へ入っていきました。扇子を開いて、昔は分かったような分からないような文句をここに書いておりまして…と。それから、閉じた扇子を持った侍が登場します。ちょっと住吉駕籠の侍に似ているかも。何が始まるのか全く分かりませんでしたが、伊八が出てきて、「宿屋仇」だ!とびっくり。宿屋仇は二回目で、3年くらい前に由瓶さんのものを聞きましたが、こういう冒頭ではなかったように思います。侍の堅そうなのにちょっとおちゃめな「鶏のケツから血を吸うのはお前か」と云う不釣合いなくすぐりは、サゲの方で始めと終わりがくっついて「冗談が好きな侍」だと分かるのですが、おちゃめな部分が離れすぎていて、今まで気づきませんでした。それが、隣の部屋の三味線を聞いて、日記を書こうと思っていた手が机から離れて、思わず上半身だけ踊り出す、という場面が入ったことで、堅物そうな侍の意外な一面がより際立ったように思います。ギャップの差にときめいてしまいました。それから、喜六清八と源やんの三人組。大坂の若い衆ではなく、「宿屋仇」では三人とも兵庫出身になっています。性格も大分荒々しくて、まるで別人のようでした。三人が宿屋に入る前に「お前、どこに行くか分かってるんか!」「知らん!」とやたら勢いの良くて、もうびっくり。職人っぽいなあと思いました。私はこういう喧嘩腰にものを話す登場人物は苦手な方なのですが、不思議と米左さんの出す人たちは平気でした。根っこに「悪い人たちじゃない」というオーラを感じるんです。そこが何とも言えず良い心地でした。勿論聴いている最中は「どうなるんだろう」とドキドキしておりましたが。荒い扱いを受けた芸者さんたちも、お腹の中では嫌な顔をしていると思います。それでも「酷い」とまで思いませんでした。こんなに荒い言葉遣いと仕草をしているのに。これが「野にして粗だが卑ではない」という事なんでしょうか。聞いている内に三人が可愛く思えてきました。相撲から女の話題に移って、侍の妻に間男して、妻と侍の弟を殺したという自慢話も、弟を殺す場面で「やっぱり嘘っぽい」と思うくらいの刺し方(料理をつつくみたいにブスブス刺す)。ここで笑ってしまいました。三人組の勢いの良さは暴走せずに、侍の静かに寝たいという苦情をいう所で一端ブレーキがかかります。それが交互に来て、思わぬ展開へ。それでサゲになります。本当に素晴らしい一席でした。噺に深みがあって、格の違いを見せられた思いです。


中入り後は、雀松さん。思わずうらめしく見てしまうのは、昨日の菊江仏壇のせい(完全に八つ当たりです)。この日は、少し珍しい噺をと「播州巡り」。有名なのは「播州皿屋敷」で、姫路辺りかなと思ったのですが、意外と広い地域を指すようです(播磨(播州)とは)。喜六清八が、播州を旅するのですが、清八はまるで観光大使のよう。めちゃくちゃ詳しい。あっちこっち見物に行くので、ゆっくりと二人の会話を聴くことができませんでした。見所を幾つか減らして、喜六清八のゆったりした旅を味わいたいです。二人が海を見る場面はとても良かったと思います。
※松喬さんの「天王寺詣り」(CD)のマクラで、落語は昔、観光案内の役割を果たしていた時期もあったと述べられていたので、「播州めぐり」も、そういった流れをくむのかなあと思います。


米二さん、「私は“菊江仏壇”はしませんよ」と。7月1日は米左さんが、7月2日は雀松さんが「菊江仏壇」を出したので、そう言ったのでしょう。「あれは気軽に出せるものではないから」(うろ覚え)と言っていたような。ご自身の会では出しているようですが、鉄板ネタを出す(ものだと思っている私)動楽亭昼席には向かないという事なのでしょうか。マクラは良く覚えていませんが「久しぶりに米二さんの落語が聴ける」と思うと嬉しく思いました。出したネタは何と「くしゃみ講釈」。米二さんの得意ネタだったなんて。確かに本の中に収められているネタの一つではありますが、あれは人気のあるネタを揃えたのかなと勝手に思っていました。というのは、私が初めて落語を生で聴いた会で、米二さんの「くしゃみ講釈」が出たのですが、その時はピンと来ず(この会は紅雀さんも出ていたのですが運命的なものを感じませんでした)。講釈の場面は本当に素敵でしたが、主人公が「物忘れ」をする場面でちょっと怖くなってしまって(^^;)。今から思えば、トリの南海さんの出番の事を思われて、余り長引かないようセーブしていたのかもしれません。今回は、主人公が「物忘れ」をする場面、全く違和感を覚えず、それに感動してしまいました。講釈小屋に入ってからの主人公のおとぼけ具合も、ちょっと天然系で可愛かったです。「ばっちり!」って(笑)。それから、主人公が彼女とデートしている場面。ここはどうして、後藤一山が二人に気づかず近づいたのか?と疑問に思ってしまう所ですが、主人公と彼女は狭くて薄暗い路地に居て壁にへばりついていて、後藤は路地手前の少し明るいところにいたので、二人に気づかなかった…というフォローが。実際は兎も角として、こういうカバーをしてくれると本当に嬉しいものです。確か紅雀さんには無い台詞。参考にして欲しいです。それから、主人公が「八百屋お七」の覗きからくりの唄を歌う場面では、「火柱の~」というところまで行きました。紅雀さんはそこまで言わなくて、佐ん吉さんは確か言っていました。という事は、佐ん吉さんは米二さんに教わったのでしょうか?歌う節も紅雀さんと米二さんは微妙に違うので、その違いも楽しかったです。講釈の場面は、紅雀さんほど熱く語りません(やったら血管切れそう^^;)。静かな口調の中に迫力がありました。実は、初めて見たときの方が迫力があったようにも思うのですが。「噺の面白さ」というものをじっくりと聴かせてくれる噺家さんだと思います。ベテランさんも進化し続けるんですね。


※2011年7月18日(日)感想を書き終えました。

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