めいぷるごにんばやしの会

2011年5月17日(火)箕面メイプルホール

桂 吉弥  「ちりとてちん」
桂 紅雀  「鉄砲勇助」
桂 ひろば 「へっつい幽霊」
~中入り~
桂 米紫  「兵庫船」
桂 まん我 「寝床」


許されるなら、紅雀さんが暴走した頃合いに、
「落ち着け」というプラカードを客席の片隅で掲げたかったです。
吉弥さん、この頃は前座で出てくる機会は滅多になくなりましたが、とレア度をアピール。前座というのは独特の雰囲気があって緊張しますねと言っていたような。「いつもは(弟子の)弥太郎を生贄にするのですが」と(笑)。阪神が弱いですねとぼやきモードになるかと思いきや、野球のエースは、先発で出てくるけれども、落語は後ろの方にエースが出てくると。ぼろぼろになって高座(マウンド)を降りるか、きっちり抑えて高座を降りるかは分かりませんが、と言って「ちりとてちん」が始まりました。初めて聴く噺です。「青菜」と少し似てますね。料理を美味しそうに食べる喜六(?)が良かったです。計算してご馳走を食べさせてもらおうとかそういう欲を感じさせず、天然で人から愛されるような感じのおとぼけさが良く出ていたように思います。その喜六と正反対の人物が、口が悪くて旦那さんから嫌われているのですが、ご馳走を「不味い」とか言いつつも美味しそうに食べていたのが印象的でした。笑いもしっかり取っていたように思います。ただ、前座のつとめを果たそうと、少しでもお客さんを笑わせようと思われたのかもしれませんが、ベテランの渋い味を出してきても良いようにも思いました。口笛を吹かなくてもお酒の美味しさは充分伝わるのではと。今回、5人の中で一番食欲をそそられたのは吉弥さんの高座でしたので。


紅雀さん、マクラで覚えてるのは、政治批判の話です。政府は嘘ばかりついて、税金を上げようとしていると。これはべにこごでも似たような話を聴きましたが、また新たに腹の立つ事が増えたのでしょうね。お客さん、紅雀さんの話を聴いて引いていたような。話の内容に引くというよりは(辛口でも穏やかな口調で話す噺家さんもいるように思いますので)、紅雀さんの強い(熱い)思いに「ひえ~」と圧倒された感じでしょうか。どれが嘘でどれが本当なのか世の中にはよく分からないことが沢山ありまして、と言って嘘八百噺の「鉄砲勇助」へ。月末亭で聴いた「いらち俥」を思い出してしまいました。焦りが勝っている感じが出ていましたので。主人公がぽんぽんと嘘を並べるため、勢いづいて話さなければならない気持ちは何となく分かるのですが、勢いがある口調と早口で話してしまうのは違うのではないかと。4代目米團治の本に「落語は話すな、語れ」という言葉があったように思うのですが、話すと聞き手は聞き流してしまう部分もあるけれども、語ると心に残るものが多いのでは。これは噺家さん自身がよくご存知のことであり、だた理想に身体がついていかないのだと思います。「鉄砲勇助」は、主人公が話す嘘の世界を楽しむ噺。主人公も楽しんで嘘を言っているように思います。「こんな出まかせよう言うわ」と思わずに(これは客が心の中で突っ込む事でしょう)、話し手も童心にいくらか返り、楽しんで嘘をついてもらいたいネタだなあと思います。大きな杉の木や、大猪が駆ける様子、猪の子供が出てくるあたりは凄く良かったです。終盤、凍った火をかち割る紅雀さんは楽しそうに見えたので、課題は前半部分なのかなとも思います。
※「鉄砲」とは「嘘」のこと(音がうるさい割には命中率が低いから?)。主人公が、嘘つきで有名な勇助という人物の住む村を訪ねる場面があるようですが、そこまで行かず噺を終わらせることが多いようです。


ひろばさん、マクラもそこそこに「へっつい幽霊」へ。へっついを買いに来るお客さん、一人目と二人目が同じ人の様に見えるのですが(佐ん吉さんの時もそうでした)、これはそういうものなんでしょうか。二人目の方が少し強そうな人(お化けにもびくともしないような感じ)だったら、へっついのいわくに箔がつく感じがするのではないかと思ったりするのですが。ひろばさんは、熊さんなど、職人気質の人物は、凄く良いなあと思うのですが、若旦那に少し納得できません。紅雀さんの崇徳院の若旦那もそうでしたが、なよっとして声が高いので、女の人が出てきたのかなと思ってしまうんです。もっと男らしい仕草や口調(特に語尾を強調されると私は弱いのですが)を若旦那にも備えてもらえたらと。勘当された若旦那なので、普通の若旦那ではないはずです。へっついからお金が出てきた時もすかさず「山分け」と言える人ですから、それなりにしたたかな人ではないかと。勘当されても平気で、素人で無い女の子ともお金に糸目をつけずいちゃつける、そういう調子ののった人の前に幽霊が出て、慌てふためく可笑しさも、この噺の面白さとして眠っているのではないかと思います。それから、ばくち打ちの幽霊、これも難しい役どころです。幽霊なので弱々しいばくち打ちになってしまうのですが、ただ弱々しいばかりでは、ばくち打ちらしくありません。賭け事をする人間の一面、またそれに付随して熊さんと会ったことは無いけれども良く知っている人物だという台詞があったのですが、そこをもう少し掘り下げてくれたらなあと思いました。噺の終盤近くで客の携帯が鳴ってしまい、私は台詞が飛んだことに気づかなかったのですが、携帯で噺家さんの集中を途切れさしてしまった事は大変残念に思います。ひろばさんに足らないものは何となく経験のように思いますので(技術的なものは同年代以上に持っているのではと)、一生懸命取り組めば、時間がひろばさんを成長させてくれるのではないかと、少し楽観的に考えています。


中入り後は、米紫さん。出てきて直ぐに「これは期待できる」と直感。話す直前、首と手を同時に「びっ」っと客席に向ける仕草が余りにキレが良くて、胸中にその芸(?)が飛び込んできたような気持ちになりました。トリの前のモタレというポジジョンでしたが、マクラは心持ち長めに。舌を慣らすというより、お客さんに「少しでも楽しんで帰ってもらいたい」というサービス精神のように思いました。地方の落語会での出来事で、一度も生の落語に接したことの無い施設のスタッフさんが、一生懸命、会を作ろうとしているところが面白かったです。こういう憎めない話、いいですね。本題は、「兵庫船」。喜六と清八のやり取りが楽しかったです。喜六のおばあさんが「板一枚下はあの世やで(?)」船に乗るなという忠告の台詞が無かったように思うのですが、これは別の噺に出てくる台詞なのでしょうか(野崎詣りかな)。船の中のなぞかけ場面、ここが本当に面白かったです。喜六の分からんという気持ちが凄く分かるので、何だか可愛く思えました。なぞかけの答えが出る度に、「ほお~」と客席から感嘆の声が。めいぷるのお客さんは新鮮に噺を聴いてくれる人たちなのだなと思いました。賑やかで充実したなぞかけの部分に満足したのか、ふか退治の場面が短くて、以前別の噺家さんのものを聴いた時は少し不満に思ったのですが、ここはあっさり終わってもいけるものなのだな、サゲの一部なんだなと思えました。私はやっぱり噺家さんの将来性とか可能性を感じる高座が好きです。米紫さんも、今回オリジナルのようなものを幾つか入れていた様に思うのですが、客の反応が良かったものとそうでなかったものを整理して、次へ活かしてくれたらなあと思いました。これからどんどん良くなる予感のする噺家さんだなと思います。


トリは、まん我さん。マクラの時間を米紫さんに取られたのでしょうか(^^;)、友人の上司(習い事を人に披露したいと思っている人)のお話を振ってから、さくっと本題「寝床」へ。まん我さんのマクラは余り長いものを聴いたことがありません。長くお話されることもあるのでしょうか。餃子のマクラは凄く印象に残っていますが、それも長いという程ではなかった様な。「寝床」はおもちゃ箱を引っくり返したような楽しい噺だなあと思っています。色んなものが飛び出してくるので。まん我さんの「寝床」は2回目。雀の学校からどう進化したのか聴くのが楽しみでした。どこがどう変ったのか、はっきりとは分かりませんが、前回よりも細部がより丁寧に語られているような印象を受けました。空襲警報や、最後に定吉が出てくる辺りも、少し唐突な印象があったのですが、今回はそんなに違和感を感じませんでした。私の耳が慣れたのか、まん我さんの噺の世界に入っていけるようになったのか、そこはちょっと分かりません。雀の学校では大熱演という感じでしたが、めいぷるの方が肩の力が程よく抜けていたように思えて、こちらの方が好みです。実は、ここをもっと良くすれば、という感想が持てなくて困っています。(私は噺家さんの高座にいちゃもんをつけたがる性分なので…)。かと言って、120%満足した高座、隙の無い完璧な高座ともまた違った印象で「もう何も言うことは無い」とまで言えないのです。もう少し、まん我さんのエスプレッソ(のような濃い圧縮したもの)を見たかったような。「船弁慶」のようにがらっと変る場面転換が少ないので、世界観の広がりを出すのが難しいのかもしれません。旦那さんは家の中にいて、そこで話す事が多いのですが、出来たら家の中に居つつも、お客さんが家の外の様子(慌しい町内や久七の実家まで)をイメージ出来るようにしてもらえたらなあと思います。高難度な要求を出してすみません。これくらいしか言うことが思いつかないのです。

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