生喬まるかじりの会

2011年4月24日(日)ワッハ上方レッスンルーム

桂 小鯛   「癪の合薬(しゃくのあいぐすり)」
笑福亭 生喬 「牛の丸子(うしのがんじ)」=牛の丸薬
旭堂 南湖  「柳田格之進(やなぎだかくのしん)」
(きょくどう なんこ)
~中入り~
笑福亭 生喬 「崇徳院」

鼎談(演者による座談会)
小さなレッスンルーム、パイプ椅子席がほぼ満席でした。


 小鯛さん、この間動楽亭で聴いた「時うどん」が本当に面白かったので、期待は急上昇。聴いていて、ほっと出来る噺家さんにまで成長しました。たぶん、小鯛さんより若い子だとハラハラしてしまいそう(勝手なイメージですが)。噺の内容は、小噺に近く、珍しいものだとか(鼎談で生喬さんに「ええ度胸しとる」と言われていました)。珍しい噺のようですが、筋そのものはシンプルでとても良く出来ているように感じます。前座ネタとして定着しても良いのは。内容は、とある姉妹が箕面の山に紅葉狩りに行き、そこで姉が青大将(蛇)を見て、癪を起してしまいます。妹は、昔姉が癪を起こした時、ヤカンを舐めて治ったことから、ヤカンを探すのですが、道中なので見つかりません。道の向こうから、髪の薄いヤカン頭の侍が従者を連れてやって来て、どうか頭を貸して頂きたいと懇願するのですが…。お姉さんも個性的ですが噺の中ではずっと苦しんでいるだけで余り出番がありません。秀逸なのは侍。ヤカン頭だけど、どこかふっきれているというか。従者のボケも面白いです。本当に面白くって、のめりこんでしまいました。小鯛さん凄い。オーバーリアクションではなく、自然体に近い形で笑いを取っているように見えました。侍が「ほんまに~」と思わず言ってしまったのも、ご愛嬌。わざと二回言って笑いを取っており、若手の子でもこういう技が使えるのだなあと思いました。


 生喬さん、しばらくワッハ上方が休館していたので、リニューアルしたのかと思いきや、そのままだったと。毛氈にほこりがかぶっていたそうです。このまるかじりの会と、もう一つの会(失念)は、自分の原点なので、大事にしているとの事でした。他にも松喬師匠と東京の噺家さんの二人会で前座をした時、初めてお茶子をしたという体験話も聴かせてもらいました。お茶子を研究する余り、肝心の前座のお仕事でとちってしまったそうです(笑)。話すのが好きで、それが高じて仕事をさせてもらっていますが、どうも仕事をしている感覚がないと。う~ん羨ましい。恒例のイラスト色紙をかけたじゃんけん大会では、いい所まで行ったのですが、あえなく陥落。終演後、まだ色紙が高座の後ろに掛けられていたので見に行きますと、高台で腰を掛けた人物(女性?)が後姿に描かれており、大坂の町並みを見ている絵でした。崇徳院の舞台をイメージして描かれたのでしょう。
 「牛の丸子(がんじ)」は「牛の丸薬」と同じ内容でした。大分前ですが、紅雀さんのものを聴いています。生喬さんは、主人公を落語に出てくる一般的な男として登場させ、ボケ役の子分と一緒に田舎の村を目指します。主人公が普通にニコニコしているので驚きました。紅雀さんは何かを思案してる感じで殆ど無表情だったんです。紅雀さんのやり方の方が珍しいのかな?大和炬燵を指でいじって泥を幾つも丸める仕草もありませんでした。(言葉では説明していましたが)。牛に藁を差し出す仕草、ここは紅雀さんの方が良かったです(酪農大学に行ってたお陰?)。主人公が村で起す詐欺事件を完全犯罪にさせ、見事だなあと思ったのは、丸子を村の人に渡す際「ここだけの話にしてくださいね」と唇に人差し指をあてた仕草を見たときでした。紅雀さんは、こういう仕草してたかな?よく思い出せません。入ってなければ入れた方が良いと思います。噺そのものは上手いなあと思って聴かせてらもらったのですが、どうしても頭の中で紅雀さんの特徴があぶり出されてしまい、本当に失礼な客でした(ごめんなさい)。


 旭堂 南湖さん。チラシの写真と大分違いますね。細身で顔立ちもシュッとしています。実は、チラシの写真、生喬さんがお芝居をしている時に撮られたもので、南湖さんではなかったのです。鼻髭で、髪の毛がふさふさとして、俯き加減の厳かな表情だったので、今回はベテランの講談師をゲストに呼んだのかと思っていました。南湖さんは、生喬さんの大学の後輩で5つ下なのだそうです。講談は2年ぶりくらい。南海さんの「後藤一山の逆襲」を聴いて以来、2回目です。声量は落語ほど大きくなく、静かに声が部屋に響く感じでした。講談師さんも話によっては叫ぶことがあるのでしょうか?内容は「柳田格之進」だと思います。帰ってネットで調べたのですが、これだ!という情報が見つからなくて。wikiだと微妙に話の筋が違うんですよ。柳田格之進に娘がいたりとか。今回は娘は出てこずに、近江の国を追われた格之進が上方に来て、浪人生活を送っており、碁敵(ごかたき)が出来たのもつかの間、売上金の盗難現場にいて冤罪をかけられるという話でした。冤罪とはいえ、訴えられると困るので(国許に帰れなくなるから)、お金を工面するのですが、娘が出てくるバージョンは身売りをするんでしょうか。収拾をどうやって付けるのか分かりません…。出てこない方がさっぱりしているのかもしれませんね。格之進が商人に疑いをかけられ、それでもお金を用意する所でじーんと来ました。盗難騒動の元となったご隠居が、売上金が無くなった経緯を思い出すまで凄く時間がかかっているので(8月15日に事件があり、12月14日に思い出す)、ここはちょっと違和感を感じました。落語みたいに手を入れたりは出来ないものなんでしょうか。骨と皮だけになって歌を歌っている浪人の姿がとてもリアルでした。。昔はこういう人が町にいたんでしょうね。


 中入り後は、生喬さん。マクラは奥さんとの馴れ初め…ではなく破局の危機があったという話を面白おかしく。破局を回避できたのはこごろうさんのお陰なんだそうです。奥さんが作る左甚五郎カレーの話がとてもインパクトがありました。落語についてディープな話が出来ると、何だかんだ言って他愛も無い話が出来るのが良いんでしょうねと言っていました。
 取り急ぎのメモには、生喬さんの噺の冒頭について「旦那さんの口から若旦那が恋わずらいにかかったと知らされる枝雀さん型」と書いてしまいましたが、これは間違いです。すみません。枝雀さん版は、冒頭、熊五郎の口から若旦那が恋わずらいにかかったと大旦那は知らされます。生喬さん版だと、大旦那が若旦那の恋わずらいにかかった経緯を聞き出しており、こういう訳なのでお嬢さんを探して欲しいと熊五郎に依頼する場面から噺が始まります。恋の悩みを、年齢も住んでいる環境もかなり違う熊五郎に打ち明けるのは不自然だと思ったのでしょうか。確かに熊五郎と若旦那の言葉の掛け合いを聞いても、話がかみ合ってませんし(かみ合って無いんだけど仲が良いんだなあと思わせるのはとても難しいです、不可能ではないような気もしますが)。枝雀さんと共通しているのは、若旦那が出てこないという点でしょう。
・あと五日もたない若旦那。花がお嬢さんの顔に見える、猫がお嬢さんの顔に見える。「床の間の掛軸(かけじ)の鍾馗(しょ~き)さん」が馴染みの無い言葉なので、変更?
・何故、お嬢さん側は大勢で若旦那を探しているのに、熊五郎は一人でお嬢さんを探しているのか、という疑問に対しさりげない説明。大旦那が「作次郎が恋わずらいで寝込んでいると知れたら暖簾に関わります」「一人で探して欲しい」と熊五郎に言う。
・おひつ+ワラジ5足。ワラジは大旦那が熊五郎の帯の中にねじ込む。(ワラジの縄で括ったりしない)
・お嬢さんを見つけたら借金棒引きの上100円。結婚できたら借家5軒もあげると言われる。
・それを聞いた熊五郎、楽観的にお嬢さんを探しだす。
・夕方、疲れた表情(放心状態)でお櫃の中のご飯を手づかみで食べる熊五郎。大根の漬物をかじる仕草がリアル。皮を噛み切るのに時間がかかるところが特に凄い。
・疲れて帰って来た熊五郎に、奥さんが「ええ夢見させてもらった」と。「せやけど世間って冷たいもんやなあ。あんたが声を枯らして探してるというのに…」。熊五郎「いや、声は出してへんけど…」。その一言で奥さん激怒。「手づる(崇徳院の歌という手がかり)があるのに、ぼ~っと歩いてたんか」と。
・翌朝から、熊五郎は崇徳院の歌(上の句と下の句両方!)を大声で叫びながら町を歩くことになった。始めは気恥ずかしいので路地裏に入って練習する。「ちょっとイワシ屋はん」と声をかけられる。子どもと犬は出てこない。
・夕方、熊五郎は泣きながらお嬢さんを探している「絶対見つからん」。散髪屋(風呂屋も)の行き過ぎて頭は坊主に。亭主から「もう剃るとこないで」。熊「そろそろ植えてもらおか」。亭主「それは別の店に行ってもらわんと」。ここがとても面白かった。
・煙草の吸いすぎで気分が悪くなり「おえ~」となる熊五郎。棟梁(親方?)風の男が入ってきて、お嬢さんがえらいことになった。名前も分からない若旦那を皆探している。これから自分は和歌山に行って、見つからなかったら伊勢まで行って一周まわってこいと言われた、と言う。
・熊五郎、煙管の灰をポンと落として(?)棟梁風の男に掴みかかる。「(略)花咲く春の心地して」。棟梁風の男が熊五郎の腕を振り払おうと、ぐぐ~っと力をこめて(二人の力が拮抗)、それから振り払う(格好良い!)。熊「お前を連れて行ったら、100円と借家5軒や!」。棟梁「お前を連れて行ったら、200円と借家7軒や」。熊五郎「何でお前の方が多いねん」と逆上(笑)
・サゲは「割れても末に買わんとぞ思う」
 聞いている最中は、凄く面白かったです。でも後から思い返すと、どうしても「このまま突っ走れ~!!」とまで思えませんでした。個人的には、若旦那の寝込んでいる部屋の様子や、路地裏に出てくる子ども、犬がカットされてしまったので、熊五郎が暮らしている時代の息吹まで感じ取りたかったです。でも、勉強会という位置づけですので、また噺の内容を少しずつ変えてくるかもしれません。


 大ネタが終わったので、会もお開きになったと思ってしまいましたが、周りの人は誰も席を立たず。すっかり鼎談のことを忘れていました。左から生喬さん、南湖さん、小鯛さんと高座の上に座っていきます。生喬さんは、南湖さんの「柳田格之進」について、この話で賞を取ったという話をされました。生喬さんの奥さんは、落語のみならず講談の会も通っているそうで、南湖さんの「柳田格之進」を聴いて大絶賛。南湖さんが「おねえさんが何を聴きたいと思っているのか」と「聴きなれた話を出していいのか」と、どんな話を出すのか迷われたそうですが、「おねえさん」って生喬さんの奥さんのことだったんですね(たぶん)。「よく途中で話を切らなかったな」と生喬さん。南湖さんは「迷いましたが最後までやりました」。生喬さん、以前、別の講談師さんの「柳田格之進」を聴いた時、お金が盗まれて出てきたところ(?)で話を切られたので、どうなるのかと凄く気になったそうです。講談は、一日で話が終わることは少ないのか、何日もかけて長い話を聴くスタイル(「今日はここまで、続きは明日来てください」)だそう。物語りも「山あり谷あり」で、初めてのお客さんに「谷」を聞かせたら怒られてしまう、けれども南湖さんの師匠は、「谷も大事にせなあかん」と…。谷があってこその山だから。落語の「竹の水仙」は左甚五郎の講談の一番の山場で、本当は生まれた時から死ぬまで話があるそうです。生喬さんは講談から落語に移した話は「竹の水仙」の他「花筏(はないかだ)」もあるけれども、どれも言葉に無駄が無くリズムが良い、と。落語はどうも無駄な言葉が多くて、今の噺家はもっと講談を勉強した方が良いのではと言っていました。
 南湖さん、生喬さんの落語の熱い思いを聴いて、お客さんが静かになっているのに気づき「このコーナーはいつもこうなんですか?皆さん了解の上でこうなっているんですか」と。生喬さん「いつもこうやけど…」。それでも別の話題に移る頃合いだと思われたのか、今度は割とフラットな話に。南湖さんは大学(大阪芸大)の後輩だと。5つ離れているので、大学時代は会ったことは無いそうですが、南湖さんは「伝説は色々と(聞いてます)」と、ぼそり。今回のチラシの写真も話題になりました。エレベーターの中でチラシを見て南湖さんは笑ってしまったのだそう。「誰やこれ」と思ったんでしょうね。髭面のふさふさ頭の、妙に決まったポーズを取った生喬さんの写真がチラシに。生喬さん、チラシに載せる写真がなくなって来て、芝居をしたときの写真が出てきて「これや~!」と。「でも、自分を知らんと来ているお客さんにとっては、「これ誰やねん」と思われたでしょうね」と。面白いけど失敗やったなあと反省の弁。
 話題は小鯛さんに移り、「癪の合薬」を出すとは、ええ度胸をしてると生喬さん。小鯛さん、「時うどん」と一緒に文我さんに教えてもらった話だそうです。二乗さんが「癪の合薬」の稽古をつけられているのを隣で聞いていて、「君もやってみるか」と。「今日は失敗してしまって」と小鯛さん。生喬さんは「勉強会とかもう開いているのか」と。「全然ですよ。でも、とま都という名前の時に一度だけやらしてもらいました」。勉強会のタイトル付けるのも大変やなあという話になって、生喬さん「小鯛の勉強漬け」(?失念)はどうや、と。福井県に小鯛の特産品(ゆるキャラ?も)があるんだそう。小鯛さんは福井の落語会で「小鯛ちゃんです」と言うとお客さんは静かになってしまったと。生喬さん、小鯛さんに勉強会のタイトルを何個か言いましたが「考えておきます」というお返事でした(笑)。

※2011年4月30日に感想を書き終わりました。
 鼎談の内容は、思い出しながら書いたので間違いがあるかもしれません。ご指摘頂ければ幸いです。

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