落語研究会 昭和の名人 四

2012年7月8日(日)なんばパークスシネマ

笑福亭 松鶴 「高津の富」意外ときっちりしてる…!
柳家 小さん 「試し酒」半分寝てしまいました
三遊亭 円生 「猫忠」映画の音量が大きすぎて…
桂 文枝   「猿後家」見台がなかった


もずさんから教えてもらった、
昔、松鶴さんや小文枝さんが話していた
マクラとか、ろくろ首の別のオチが、
映画の内容に張るくらい興味津々でした。



この日は、3ヶ月か4ヶ月ぶりに、
もずさんとお会いできた日でした。
映画が始まるのは15時20分で、
待ち合わせは、12時でした。

毎度のことながら、遅刻ぎりぎりで、
(もずさんとの待ち合わせ、2回くらい
遅刻している気がする…)
家族に迷惑をかけながら、何とか、
金券ショップ(甲南チケット)に立ち寄ってから、
落ち合うことができました。
前売り券、無事ゲット!


ランチタイムは、
落語の話に花が咲きました。
もずさんは、大学生の頃、
松鶴師匠や、小文枝師匠を、
角座?で見ていて、その話を
耳ダンボになって聴きました。
・どちらも漫才に挟まれての出演で、
トリの手前だった。
トリは、ホットブラザーズなど。
・トリの前なので、長い噺はできない。
小文枝さんは、ろくろ首など。
マクラは、結婚に反対された息子が落ち込んでいて、
母親に相談するという小咄が多かった。
※崇徳院のCDにも、このマクラが入っている。
・ろくろ首のオチは、首を長くして…ではなく、
蚊帳をくぐるのが大変、というもの。
・松鶴さんは、三十石を短くしたものなど。
マクラは、父親が男の子に、借金取りが来たら、
「おとうちゃん、出張や」と言え、と仕込むもの。
男の子を演じる松鶴さんを想像すると、
大変ほほえましい。
・二つ目に仁鶴さんが出てて、
とても面白かった。ちょとHな漫談をしてた。
・・・
大師匠でも、トリじゃなくて、
漫才に挟まれての出演だったことに衝撃を
受けました。そういう時代だったんですね。

私は、頼まれもしてないのに、
紅雀さんのビックリマンシールを、
もずさんに見せました。
ゴールド版の紅雀さんにキズが入った事を
嘆くと、
「また作ればいいじゃないですか」
という、目から鱗のお返事が!
ほんまや…! PCにデータ入ってるやん。
 で、ラメ版のシールの方がいいね、と
言われて、紅雀さんにあげないの?
と、聞かれました。
その発想はなかった…。
裏面はまだ下書きの段階で未制作。
あげるとすると、そうとうな覚悟がいります。
あの下書きでいいのかどうか…
気を害されたりしないかな(悶々)。

それから、またもや、
もずさんのドッキリに、ひっかかりました。
忘れた頃に、仕掛けてくるので、
全く読めません。
 一番すごかったのは、
紅雀さんの差出人の名前で、
落語チケット入りの手紙を送ってきたことです。
あの時は、心臓が爆発するかと思いました。
自意識過剰な私を心理を突くやり方です。
 今回のドッキリは内緒にしときます。
めちゃくちゃひっかかったので、
まだ恥ずかしい! のもあるし、
ドッキリと引き換えに入手したものが、
非売品で、公表しづらいからです。
 もずさんは、大成功と喜んでいました。
くやし~! 今度こそ、引っかかりませんように


ご飯を食べ終わっても、
まだ時間が余っていたので、
ジュンク堂の落語の本のコーナーで
ウロウロしました。
本棚が三つくらいあって、驚きました。
これ、全部落語の本なんや~! 感動
もずさんのオススメの本は、
落語家列伝?とかいう本で、
枝雀さんの特集(あと馬生さんの特集も!)
が組んである本です。
10年位前の紅雀さんが載ってました。
もっと若い頃の写真も。
「惚れ直したでしょ?」
と言われましたが、何だか知らない人みたいで、
「今の方がいいです!」と言ってしまいました。
この本、紅雀さんが師匠を追っかけたルートまで
詳細に載ってるので、かなり重要な本です。
2000円ちょっとのお値段ですが、
それ以上の価値はありそう。
余り図書館で見ない本ですね。


なんばパークスシネマの、
落語の映画は、思いのほか、若い人が来てました。
この間よりも年齢層が下がったかも。
ふかふかの広い座席シートで嬉しかったです。

一人目の噺家さんは、六代目松鶴さん。
昭和45年ですが、白黒映像です(衝撃)。
ちょうどカラーとの替り目だったのでしょうか。
1945(昭和20年)年頃のナチスの映像を、
カラーで見た気がするので(学生の頃)、もっと早く
カラーになっていると思っていました。
 松鶴さん、私が想像してたよりも、
ずっと出っ歯でした。お父さん(五代目松鶴)と
似てないなあと思ってましたが、歯は似てるかも。
髪の毛は黒くてフサフサ。てっぺんは薄くなってましたが…。
 豪放磊落と聞いていたので、そのイメージがずっと
ありましたが、丁寧な噺の運びで、豪放…は、
晩年の高座の印象なのかなあと思いました。
あと、女性はあまり演じないと本で見た気がしたのですが、
「高津の富」は廓の情景が出てくるので、
お上さんではない女性がでてきます。
それも、違和感無く演じてましたよ。
 辰の富札を持った男が、茶屋?の近くで
大声で歌って、わざと通り過ぎようとする。
廓の女性は、おちょやん(見習い)の女の子に
様子を見に行かせようとするが、
おちょやんは寝ぼけ眼?で、油でべとべとの頭を
かんざしではなく手でかいてしまい、
廓の女性が直接、男を追いかけに出てゆく…
というものでした。
・おちょやんが、しっかりと髪を結っていた
ことに驚き。おかっぱではないんですね。
・廓の女性が、茶屋から出れたことにも
驚きました。絶対に出れないと思ってました。
 朝風呂行って、女と差し向かいで
酒を呑む。これが男の夢でした。罪が無いと
言うか、何と言うか。^^;
 廓の情景は、噺が生まれた後、後付けされた、
いわばサービス場面ですが、この噺を
演じるにあたっては凄く重要なポイントです。
 もう一つ、大事な場面は、この噺のキモで、
富くじが当たったことに気付かず、
番号を繰り返し、読むところです。
ここは本当に笑いを誘うところ。
枝雀さんは、番号をエコー(こだま)するように
読んでいましたが(CDでは)、
松鶴さんは、素朴な演り方でした。
本当に、繰り返し読むだけなんですが、
面白かったです。
 あと、噺の冒頭で「大阪」を、
「おおざか」と言ってました(衝撃)。
昔は、濁点読みだったのでしょうか。
「洗濯」も「せんだく」だったらしいし。
(詳しくは上方うだうだ話HP参照)
紅雀さんが、くしゃみ講釈で、
「おおざか城中、おん御上段の間には内大臣秀頼公、
おん左側には御母公淀君…」
と、言っている気がしていたのだけれど、
本当に言っているっぽい?
余りに渋い顔をしているので、喉が潰れているのかと
思っていました。
 話は元に戻して、松鶴さんの高座。
丁寧で良い口跡なんだけど、
何だか物足らなく感じました。
お客さんに心を開いていないのかな。
渋く締めたように感じたのは、トリ(最終演者)
だったのかなあと勝手に想像…。
 それにしても、何故、松鶴さんのDVDが
出ないのでしょうか。
メモ:辰の男の妄想(ボケ)と、
ギャラリーの現実(ツッコミ)が
すごい絶妙だった。漫才の原型っぽい?


お次は、五代目柳家小さんさん。
(敬称を入れると、さんが二つ付く!)
今度はカラー映像です。
丸い顔をした人ですね。
マクラは、サラリーマンの悪酔いを。
江戸弁ではなく、東京弁でした。
 「試し酒」は、映像の標題では、
“新作”と出てました。
今村信雄という人が昭和初期に作ったそうです。
私はずっと古典落語かと思ってました。
 内容は、途中で寝てしまいましたが、^^;
古典らしいものだったように思います。
 田舎出の男の演じ方が面白かったです。
人に尋ねられて、ワンテンポ置いて答える。
旦那の顔を覗き込むような間があるんです。
それがとても、田舎の人らしい。
都会?の常識が通じないのも魅力的。
相手の旦那のことを「お前」と言ってました。
 サゲは、「前もって酒を五升呑んできました」、
だったかな。ほんと、後半、沈没していたので、
サゲをうろ覚えでも記憶しているのが不思議です。


お次は、六代目三遊亭 圓生(えんしょう)さん。
先代の円楽さんの師匠だそうです。円生よりも、
「圓生」っていう字が似合う顔立ちですね。
細くて目が大きいので、何となく。
湯のみ茶碗は、マクラで時々飲むくらいで、
噺に入ってからは、余り口を付けていなかったような。
この圓生さんの落語、
映画館のボリュームが何だか凄く大きく感じられて、
耳を塞いでてちょうど良いくらいでした。
もずさんは、「そうでした?」っていう感じで、
苦情を言いに行かなくて良かったと思いました。
 という訳で、圓生さんの落語は堪能できず…。
「猫忠」って、「猫の忠信」の略だったんですね。
女子高生の略語っぽい(笑)。
一応、テキストは耳に入ってるのでメモメモ。
・タイトルと同じように、上方の、
「猫の忠信」を、少し縮めたような内容。
ストーリーは、ほぼ同じだけど、登場人物の
出し方が少し違います。
・師匠と常やんの間柄をねたんだ六さん
上方では、自分に出番が少ない役をあてられて、
ひねくれてしまい、「稽古を止める、さっき
二人が会っているのを見た」と言います。
圓生さんだと、お稽古の発表会の役については
ふれられず、不倫現場を見た六さんが、
「稽古を止める」と言い出します。
・不倫現場まで主人公を連れて行く六さん。
常やんのお上さんに告げ口するところまで、
付いてきます。
・上方だと、六さんは、稽古を止めると
言った後、立ち去ってしまいます。出てきません。
主人公が、不倫現場まで行き、
常やんのお上さんに一人で告げ口に行きます。
・圓生さんの場合、覗きも、密告も二人です。
上方は主人公一人。
・圓生さん、常やんのお上さんが、縫い物をしていて、
やぶってしまおうかという所が無かったような。
告げ口を聞いて、やきもちを焼くところ、
それが嘘だと思うところも、割かし早く話が済みました。
上方は、お上さんが天然系(ちょっと単純)で、
話が、もたもたと進みます。
お上さんが、不倫現場を見に行く場面も
カットされて、常やんが、いきなり見に行きます。
上方の「もっちゃり」感って、ここなんだなあと
思いました。
・化け猫が出てくる時の、お囃子と、台詞が
上方とちょっと違っているように思います。
ごろにゃん、ごろにゃんって言ってたかな?
圓生さん、迫力満点(笑)。
・テキスト的には上方の方が好きです。
「王子の狐」は、東京の方が好きですが…。


お次は、五代目文枝(当時は小文枝)さん。
こちらもカラー映像です(^^)。
「猿後家」は、お弟子さんの文華さんのものを、
一度だけ聴いたことがあります。
その時は、見台があり、
「おいえはん(後家さん)」の怒りがピークに
達すると、トントントーンと叩いていました。
(めちゃ面白かったです)
ところが、今回の文枝さんは、見台がなくて、
おやっと思いました。
それでも充分に見ごたえはありましたが、
文華さんの見台の工夫は、どこから来たもの
なのか、ちょっと気になりました。
 手伝い(てったい)の又兵衛が、
子どもを連れて、「まんまんちゃん」と
後家さんの後を付いて回る場面は、
文華さんだと、部屋をぐるぐる回って
歩いている印象を受けましたが、
文枝さんは、部屋をぐるぐる歩いている
イメージは沸きませんでした。
「まんまんちゃん」と言うときの体の向きが
微妙に違うのかもしれません。
 文枝さんは、あっさりしてるけど、重みも
ありました。
奈良の名物をずらずらと言い並べる場面は、
文華さんの時は、
「この噺を作った人は、奈良の観光大使を
つとめていたのかな」と、冷静に見てしまった
のですが、文枝さんの時は、
それを思う間もなく、言いたての素晴らしさに
圧倒されました。
サゲの台詞「ようヒヒに似てます」を、
言った時、映像から余りに凄みを感じて、
吃驚しました。これが名人のオーラなのでしょうか。
 「猿後家」は、おいえはんが、
余りに単細胞なので、もう少しテキストに
工夫を加えて欲しいと思うネタです。
「さる」が禁句なのは分かりますが、
「さるさわの池」で、クビになるという
設定は、どうかなと。
おいえはんは、機嫌を損ねる程度にして、
太鼓持ちが慌てて、口を滑らして「さる」と
言ってしまい、それで、しくじる…
というやり方もあるのではないかと思いました。


※7月16日に書き終わりました。

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六代目

松鶴は「意外と」きっちりしてましたか。
CDは持っているのですが、DVDはあまり発売されてないみたいで、映像で六代目を観る機会がありません。
映画で落語を観るっていうのはどうも抵抗があって、ブリーゼの「枝雀」の会にも行ったことはないけど、「松鶴」が動いて、喋っているところはぜひ観たいですねえ。
最も大阪らしい六代目が懐かしい!

面白そう♪

私的には吉朝さんのときに見に行きたいと思ったけど、上映時間が妙な時間帯とちゃいました?
ま、週末に行けばえ~んですけどね。
紅雀さんご出演情報を見つけました。
ざこばさんの独演会どす。

http://www.shinkobeoriental.com/koen/1111.html

ピーマさんへ
私は、初め、池田市のアゼリアホールで、大スクリーンの枝雀さんの「つる」を見ました。とても面白かったですよ。「映画で落語」は、大スクリーンで皆で笑える環境にあるので、中々悪くないように思います。「昭和の名人」シリーズの上方落語のチョイスは、どうも私と好みが合わないようです。もっちゃり感が少なくて、スマートなんですよ(何となく)。噺としては完成度が高いのかもしれませんが、なんだか心が満たされません。松鶴さんのが意外と渋く感じたのは、もしかして「トリ」の出番で、あっさりと決めたのかもしれませんね。

にこさんへ
妙な時間帯…確かに(^^;)。しかも、「昭和の名人その3」の時と、時間が変わってました。15時20分だったかな。平日の上映時間は分かりませんが…。妙な時間帯だったおかげで、もずさんとたっぷりお喋りできました。^^
 紅雀さんの出演情報、有難うございます♪
私よりずっとアンテナが高い、にこさんに感謝!

せんだっき

大坂を「おおざか」と読むのは比較的ポピュラーだと思います。ご指摘の通り、大坂城「おおざかじょう」で冬の陣と夏の陣を合わせて大坂の役「おおざかのえき」と言います。
そういえば、明治生まれのうちのじいちゃんは、洗濯機のことを「せんだっき」と言うてました。それ以外に大阪弁で余分に濁点を付ける言葉ってあまり思いつきませんねえ。
「せんだっき」も、徳島訛りかと思ってました。
松鶴の噺は決して豪放磊落ではないと思いますよ。彼の普段の言動や行動が豪放磊落なのでそのように思われがちですが、噺は極めてオーソドックスで、美しい大阪弁をじっくり語る語り口でした。
晩年は、やはりアルコールの影響でしょうか?かなり呂律があやしくなってきてましたけど。それもまた、味ということで。

ピーマさんへ

 大阪(上方?)弁の濁音、明治生まれの人は使っていたんですね。それ以前の人も? 昔の人は舌が短くて、平安時代の人は蝶々を「てふてふ」と言っていたとか、そういう流れで、濁音化していたのでしょうか。
 六代目松鶴は、
>噺は極めてオーソドックスで、美しい大阪弁をじっくり語る語り口
ピーマさんがこう言ってくれると頼もしいです(^^)。オーソドックスというのは、高津の富を聞いて、ほんまに、その通りだと思いました。「崇徳院」も、お父さんの五代目より、昔ながらのやり方をしているように思います。勿論、細かなところでは五代目、ご自身の工夫も噺に上乗せされていますが、根っこに、昔ながらの上方噺がちゃんと入っているように感じます。豪放磊落は、晩年の、舌が思うように回らないけどお酒の噺を面白おかしく演じきったというイメージからなんでしょうか。
プロフィール

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